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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第113回

なた「前回は薄姫のお話をしました」

コトタ「本当に謙虚で善良な女性でした」

なた「でしょう。

   今回からの主人公はその息子、劉恒です」

コトタ「つまり文帝編の主人公ですね」

なた「ええ。

   漢王朝において文帝ってのは特別な人でしてね」

コトタ「ほほう?」

なた「それを今回から話していきますので、

   最後まで是非楽しんでください!」

コトタ「はーい」

 

文帝即位

なた「この企画ではずっと呂雉が最後の主人公と言ってましたが、

   文帝が本当の最後の主人公になるのも当然でしてね」

コトタ「何故です?」

なた「呂雉が主人公の理由を史記の本紀を根拠に

   説明したことがあったでしょう?」

コトタ「でしたね。

    史記の本紀は五帝、夏、殷、周、秦、始皇帝、項羽、劉邦と続いて、

    その後が恵帝ではなく呂雉だからって」

なた「ではその呂雉の次に本紀が書かれているのは誰だか覚えてます?」

コトタ「えっと……、確か文帝?」

なた「そうです、呂雉の次は文帝なんです。

   というわけでその文帝が即位に至るまでのお話をしていきましょう」

コトタ「お願いします!!」

なた「劉氏の長老である劉沢と群臣の協議により次の皇帝が決まり、

   代王の劉恒を長安に招聘する使者が送られました」

コトタ「ふむふむ」

なた「使者が到着すると劉恒は腹心や側近を集めて相談します。

   みんな大好き会話シーンでそちらを見てみましょう」

コトタ(みんな大好きなのか……?)

 

劉恒「朝廷より私を呼び出す使者が来ましたが、

   これについて皆はどう思いますか?」

張武「王様、朝廷の大臣は皆いずれも高祖(劉邦)の時代に将軍だった者で、

   軍事に明るいだけでなく、謀略も得意です」

劉恒「そうですね」

張武「そんな彼らが今の地位に満足しているわけがありません。

   漢王朝を打倒しようと考えていることでしょう」

劉恒「では彼らは何故これまで漢王朝に従っていたのです?」

張武「高祖や太后(呂雉)を恐れていただけですよ。

   先日、2人の次に威を振るった呂氏一族は誅滅され、

   長安は血に染まったばかりです」

劉恒「ふむ……」

張武「王様を呼び寄せる為に色々な名分を掲げていますが、

   全く信用ができないでしょう。

   王様は病気と言って長安へは行かず、情勢を見守るべきです」

劉恒「張武、あなたの意見はわかりました。

   他に意見がある人はいますか?」

群臣「私達も張武殿と同じ意見です」

劉恒「そうですか、では……」

宋昌「王様、お待ちください」

劉恒「宋昌ですか、何か意見があるのですか?」

宋昌「はい。

   張武殿や群臣の皆様の意見は間違っております」

劉恒「ほほう、どういうことでしょう?」

宋昌「1つ目の理由から話しましょう。

   秦が滅びてから、諸侯や豪傑達が天下を争いました。

   "自分こそ次の天子だ"と考えていた者はたくさんいたでしょう。

   しかし天子の御位についたのは劉氏であり、

   これによって諸侯や豪傑の野望は潰えたのです」

劉恒「ふむふむ」

宋昌「次に2つ目です。

   高祖は王様や他の子弟の皆様を王に封じましたが、

   その諸侯王が天下を立派に制してくださっています。

   つまり劉氏の力は盤石だということです。

   天下の臣民は皆、その力に服しているのです」

劉恒「私の力ではございません。

   ただ皆の尽力のお陰ですよ」

宋昌「本当に王様は母君に似て謙虚ですねぇ……。

   話を続けますが、3つ目の理由もあります。

   漢は秦と違って法律は簡便で厳しくありません。

   それに徳を施しているので、民衆は安定しており、

   もしかつての諸侯や豪傑が謀反を起こしたとしても、

   国家の資本たる民衆が支持しないでしょう」

劉恒「宋昌、では君はどうすべきだと言うのです?」

宋昌「太后は呂氏一族を王侯に封じて権力を振るいましたが、

   太尉(周勃)が北軍に入った時、将兵の皆が左袒したと聞いております。

   これは人の力ではなく天の力と言えるでしょう。

   つまり劉氏は天の力によって守られているのです。

   それに長安には朱虚侯や東牟侯もいらっしゃいますし、

   長安の外に目を向ければ楚王、斉王、淮南王を始め

   劉氏諸侯王がいて、大臣は皆彼らを畏れております。

   それに高祖の御子息はもう淮南王と王様しかいません。

   王様は年長で徳が広く知れ渡っているのです。

   だから大臣は天下の道理に従って王様を長安へ呼んでいるのでしょう。

   王様、疑う必要なんてありません」

劉恒「ふむ、皆の意見はわかりました。

   これは国家の大事です。母にも相談してみます」

 

コトタ「あ、宋昌の言葉で長安へ向かう決意ができたんじゃないんですね」

なた「ですね。

   ではそのまま次の会話シーンへ」

 

劉恒「母上、どうすれば宜しいでしょうか。

   宋昌の意見は尤もだと思うのですが」

薄姫「難しい決断でしょうね。

   ここは占いの結果で判断するのはどうでしょう」

劉恒「母上がそう仰るならそうしましょう。

   では占い師をここに呼んでもらえますか?」

薄姫「そうですね」

 

占い師「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!

    では占ってみましょう。破ぁ!」

劉恒(どこかの大魔王なのでしょうか……?

   それとも寺生まれの占い師なのでしょうか……?)

占い師「"大横庚庚、余為天王、夏啓以光"

    と結果が出ました」

劉恒「ふむ?どういう意味でしょう」

占い師「"王様が進む道を阻む者は誰もいません。

     王様が天王となれば、夏の啓(禹王の息子)の様に光を放つことができるでしょう"

    という意味ですね」

劉恒「既に私は代王ですが、何の王になると言うのです?」

占い師「天王は天子という意味にございます」

劉恒「私が天子ですか……。

   どうにも腑に落ちません。

   叔父君(薄昭)を長安に送り、調べてもらいましょう」

 

コトタ「劉恒は優柔不断なんですかね……?」

なた「デートコースを考えてるわけじゃないですからね。

   国家の大事ですし、簡単には決められないのも当然でしょう」

コトタ「確かに……」

なた「というわけで劉恒は薄昭を長安に派遣しました。

   薄昭は周勃と会い、劉恒招聘の事情を聞きます。

   周勃は素直に"代王殿下に次の天子になってもらいたいのです"

   と答えたのでした」

コトタ「まあ事実ですしね」

なた「すぐに薄昭は代に戻って"朝廷を信じて大丈夫です"と報告します。

   劉恒はそれを聞き笑顔になり、宋昌に言いました。

   "君の言う通りになりましたね"と」

コトタ「そう言えば上でスルーしてましたが、

    張武と宋昌ってのは誰なんです?」

なた「張武は郎中令なので、王宮守備の長官ですね。

   宋昌は中尉で、王宮周辺の警察隊の長官ってとこでしょう」

コトタ「ふむふむ」

なた「あ、宋昌は宋義の孫です」

コトタ「えっ!?

    宋義って項羽に殺された楚の上将軍の??」

なた「ですです。

   孫の宋昌は劉邦に仕えてたみたいでしてね。

   滎陽の戦いにも従軍して、その功績から食邑を得ています。

   その後、代王の中尉として代国にいたって流れです」

コトタ「凄いところで繋がるんですねぇ」

なた「ただ劉恒はすぐに長安に向かっていなくてですね。

   一度お断りの使者を送っているんです」

コトタ「えーっと、それは即位前定番の謙譲の美徳ですかね」

なた「ですね。

   そして2度目の使者が到着してから、

   やっと劉恒は宋昌や張武ら腹心と出発したのでした。

   ちなみに劉恒の車に同乗したのは宋昌です」

コトタ「宋昌を一番信頼しているって意味ですね」

なた「そうでしょうね。

   劉恒一行は長安に近づくと、一旦車を止めます。

   宋昌が先に様子を伺いに行くと、陳平や周勃を始め

   群臣が一斉に並んで出迎えしようとしていました。

   宋昌は戻って劉恒に状況を報告すると、劉恒一行は再び進みます。

   群臣は皆自身を臣下と称して劉恒に拝謁すると、

   劉恒は車から降りて答拝しました」

コトタ「ふむふむ」

なた「周勃が群臣の中から前に進み出て劉恒に話しかけます。

   "殿下、2人でお話できますか?"と」

コトタ「即位のお願いってとこでしょうか」

なた「ええ。

   ですが宋昌が周勃の前に立って言いました。

   "所言公、公言之。所言私、王者無私"と」

コトタ「わかりませんって!!

    翻訳を早く!!!」

なた「"公的な内容なら公であるこの場で話してください。

    もし私的な内容ならば、王者に私情はありませんので、

    やはりこの場で話せばよろしいでしょう"って感じですね」

コトタ「劉恒は王者……!」

なた「それに納得した周勃はその場で劉恒に天子の玉璽を渡したのです」

コトタ「これで文帝が即位した、と」

なた「いえ」

コトタ「えっ!?」

なた「劉恒は玉璽を受け取らず"一旦、私の邸宅で話し合いましょう"

   と言って群臣を引き連れて代王の邸宅へ向かったのでした」

コトタ「ん?代王の邸宅は代国の王宮では?」

なた「長安には各諸侯王の邸宅がちゃんと用意されてるんですよ」

コトタ「なるほど」

なた「代王の邸宅に到着すると、改めて陳平が代表して話を始めました。

   "後少帝、梁王、淮陽王、常山王は先帝(恵帝)の息子ではありません。

    彼らでは劉氏の宗廟を奉じることはできないでしょう。

    その為、高祖の長子である代王殿下こそ皇帝に即位すべき

    だと群臣で協議し決定しました。

    代王殿下、天子の位にお上りください"と」

コトタ「既に2回辞退してる様なものですし、今度こそ?」

なた「劉恒はこう答えています。

   "宗廟を奉じるなんて重大なことを私のような愚昧にできませんよ。

    叔父上(楚王の劉交)に私より相応しい人物を決めてもらいたいです"

   と再び辞退したのでした」

コトタ「ええ……」

なた「陳平らは平伏して再三劉恒の即位を請いました。

   しかし劉恒はさらに5回辞退を繰り返したのです」

コトタ「合計8回ですよ!!

    謙譲の美徳は充分示せてます!!」

なた「陳平が言います。
   "代王殿下が相応しいと臣民共に思っているのですよ。

    私達はテキトーに考えたわけじゃないです。

    殿下、私達の意見をどうかお聞き入れください。

    改めて玉璽を献上致します。お受け取りください!"と」

コトタ「さぁ、どうなる……!」

 

劉恒「わかりました。

   皆が私より相応しい者がいないと言うなら受けましょう」

 

なた「この瞬間、漢王朝"3"代目皇帝、文帝が誕生したのです」

コトタ「3代目?

    劉邦、恵帝、前少帝、後少帝の次だから5代目では?」

なた「前少帝と後少帝は劉氏かどうかもわからないので、

   皇帝にカウントされないんですよ。

   もちろんカウントして5代目と言う場合もあるのですが、

   私は前者派なので」

コトタ「気持ちはわかります……」

なた「というわけで文帝が無事即位したので、

   今回はここらで終わりましょう」

コトタ「はーい!

    それでは次回をお楽しみに!!」

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