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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第112回

なた「前回最後に新編が始まるって話しましたが」

コトタ「文帝編でしたね」

なた「と言っても呂雉編程長くはなりませんので、

   文帝即位までのお話とハイライト形式に後日談です」

コトタ「この企画の本当の意味での最終章ですね」

なた「そういうことです。

   では何度目かの最終章、始めましょう!!」

 

賢母

なた「"後少帝は恵帝の息子ではない"

   という理由から群臣が次の皇帝をどうするか話し合いました」

コトタ「候補は斉王の劉襄(劉邦の孫)、淮南王の劉長(劉邦の息子)でしたね」

なた「でも彼らは相応しくないと却下され、

   推薦されたのが代王の劉恒(劉邦の息子)です」

コトタ「劉邦の息子の中でも最年長で、徳が世に知れ渡ってる人」

なた「ですね。

   まあ劉邦の息子で生き残ってるのは劉恒と劉長だけなんですが」

コトタ「えっ」

なた「ほとんど死んでいるか、呂雉に殺されてますから」

コトタ「そうだった……」

なた「さて、これから劉恒の話をするに当たって欠かすことができないのが、

   生母の薄姫です」

コトタ「劉恒が代王に封じられた時に名前だけ登場してましたね。

    前回も謙虚で善良だと仰ってました」

なた「ええ。

   彼女は実は魏の王室に連なる人でしてね」

コトタ「えっ」

なた「と言っても母方が魏王室なんですがね。

   父は呉出身の薄某(諱不明)でして、早くに亡くなっております」

コトタ「ふむふむ」

なた「まだ天下が秦の時代に、薄某が魏夫人(諱不明)と私通して産まれたのが薄姫でした。

   薄姫は魏豹が魏王になった頃に魏夫人によって魏の後宮に入れられましてね。

   魏夫人が娘について占いを頼むと"薄姫は天子(皇帝)を産むだろう"

   という結果が出たそうです」

コトタ「懐かしい名前が出ましたね!?」

なた「ああ、魏豹ですね。

   項羽と劉邦の間を行ったり来たりと、節操がないイメージがあると思うんですが、

   その原因が薄姫の占い結果だったんですよ」

コトタ「どういうことです?」

なた「そりゃ魏豹は自分の妻がいずれ天子を産むって言われてましたからね。

   "どうせ俺の息子が天子になる!有利な側にとりあえず味方しちゃえ!"

   ってなったのでしょう」

コトタ「なるほど」

なた「ただ結果はご存知の通り、魏豹は韓信や曹参に負けて捕らえられ、

   陳平の謀略で死んでいます」

コトタ「あー、ありましたねぇ」

なた「そこで劉邦が薄姫の美貌を見初めまして、後宮に入れたのです」

コトタ「そういう経緯で劉邦の妻になったんですね」

なた「薄姫は後宮に入ると管夫人と趙子児という夫人仲間と仲良くなりました。

   そして彼女達にこう言いました」

 

薄姫「私達の内、誰かが先に高貴な立場になったとしても、

   お互いを忘れずに仲良くしましょうね」

 

コトタ「陳勝が農民仲間に似たようなことを言ってたような」

なた「まあ友人同士の常套文句だったのでしょうね。

   現代日本でも似たような話を聞いたことはありますし」

コトタ「ふむ」

なた「しかし薄姫はいつまで経っても劉邦の子供を身に授かりません。

   一方で仲良しだった管夫人と趙子児は先に劉邦の子を産んでおりました」

コトタ「あら……」

なた「ある日、まだ漢王だった頃の劉邦が管夫人と趙子児を侍らせていました。

   すると2人が薄姫が言った約束の話をして笑い始めたのです」

コトタ「ひどい……」

なた「劉邦は2人に経緯を詳しく聞くと、心を痛めて薄姫を哀れみました。

   その為、夜になると劉邦は薄姫を寝室に呼んだのです」

コトタ「さすが天下人、男らしいですね」

なた「薄姫は劉邦に言います」

 

薄姫「殿下、昨晩私は変な夢を見たのです。

   私のお腹に蒼龍が居座るのです」

 

コトタ「蒼龍……!」

なた「劉邦は"それはお前が高貴になる予兆だろう。俺が実現させてやる"と応じ、

   こうして産まれたのが劉恒なのです」

コトタ「占いの結果は本当だった……?」

なた「まだこの時はそうは思ってなかったでしょうけどね。

   でも劉恒を産んでから、特に薄姫は寵愛されてなくてですね。

   劉邦と会うこともほとんどなかったのです」

コトタ「ええ……」

なた「しかしそれがある意味で薄姫の幸運でした」

コトタ「どうしてです?」

なた「劉邦が死んでから戚夫人がどうなったか覚えているでしょう」

コトタ「あっ」

なた「戚夫人だけでなく、劉邦の寵姫は大半が幽閉されて殺されてるんです。

   例えば淮南王の劉長の母親の趙姫も呂雉が原因で死んでますから。

   と言っても趙姫については貫高謀反事件の流れなので劉邦生前の話ですが」

コトタ「薄姫は寵愛が薄かったから呂雉に見逃された?」

なた「そういうことです。

   その為、劉恒が代王になった時に何事もなく代王太后として

   代国へ赴くことができたのです」

コトタ「寵愛が薄かっただけじゃなくて、

    謙虚な性格ってのを呂雉が知っていたのもあったんでしょうね。

    "あの子なら呂氏を害することはないだろう"って」

なた「でしょうね。

   その謙虚について、文帝が即位してからの話になりますが、

   薄姫というか薄氏が呂氏とは違うという実例があります」

コトタ「ほほう?」

なた「呂氏は呂雉によって4人の王が立ち、数多くが列侯に封じられましたが、

   薄氏から列侯されたのは軹侯の薄昭(薄姫の弟)だけなんです」

コトタ「八王編から続けて見てて、外戚なのに権力を

    振るわなかった一族は初めてなのでは……?」

なた「そうかも……?

   まあ薄氏全体がそういう気質だってのも有名だったんでしょうね。

   だからこそ群臣も劉恒を選んだわけです」

コトタ「彼女が劉邦の生前に皇后になっていれば、

    異姓諸侯王の粛清も起こらず、平和な漢王朝が続いたのでしょうね……」

なた「恐らくそうなっていたでしょう。

   では薄姫の紹介は以上になります。

   短いですが今回はここら辺で終わりましょう」

コトタ「はーい!

    次回また会いましょう!!」

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