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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第110回

なた「前回、遂に劉氏による呂氏誅滅の動きが始まりました」

コトタ「でもそれは長安の外側だけで、内側は膠着していた」

なた「今回はその膠着がいきなり崩れます」

コトタ「どうなるのか楽しみです!」

なた「それでは本編を始めましょう!!」

 

劉氏VS.呂氏・その2

なた「劉章の計画により斉王の劉襄は動きましたが、

   そこが劉章の限界でもありました。

   長安内部の膠着を大きく動かすにはもっと大物の力が必要だったのです」

コトタ「長安に残る大物っていうと陳平と周勃ですかね」

なた「その通り。

   周勃は太尉ですので軍事においては最高権力者でした。

   でも軍権の大半を握ってるのは呂氏で、

   周勃は何もできないでいたのです」

コトタ「創作モノなら軍権や兵権の有無なんて表現されることなく、

    周勃が大演説をして兵士が心を動かされて従う!みたいな流れになるでしょうけど、

    現実だと権限がなければ何もできないんですものね……」

なた「ですねぇ。

   というわけで陳平が謀略を周勃に授けています」

コトタ「当代最高の謀略家が動いた!!!」

なた「実は愉快な仲間達の酈商の息子である酈寄は呂禄と親友でした。

   その為、陳平と周勃は酈商を捕まえて人質としたのです」

コトタ「えっ」

なた「2人の人質となった酈商は酈寄を呼び出して、

   陳平の謀略通り呂禄への伝言を伝えさせます。

   酈寄は父に従って友を裏切る決断をしたわけです」

コトタ「大義の為なら小義も捨てるしかない……?」

なた「難しいとこですけどね。

   後に世間からは"売友"という誹りを受けたらしいですから」

コトタ「まあ……」

なた「本題に戻りますが、酈寄が呂禄に伝えた内容を見てみましょう」

 

酈寄「呂禄っちー!」

呂禄「酈寄っちじゃん、どしたの?」

 

コトタ「え、そんな感じで進めるつもりです?」

なた「たまにはこういうのもいいかなって……」

コトタ「そうですか……」

なた「では気を取り直して続きを」

 

酈寄「今は劉氏からは9人の王、呂氏からは3人の王が立ってるよね」

呂禄「えーっと劉氏は瑯琊王、楚王、斉王、代王、淮南王、

   呉王、常山王、淮陽王、済川王。

   呂氏は呂(梁)王、燕王、そして趙王の俺だね」

酈寄「うんうん。

   それらはぜーんぶ大臣がいっぱい相談して決めたことだし、

   諸侯や群臣もみんな認めてると思うんだ」

呂禄「うん」

酈寄「でも太后(呂雉)が崩御して、天子(後少帝)が幼いからか、

   呂禄っちは趙王の立場があるのに趙を守る為に帰国しないで、

   上将軍のまま長安に留まってるじゃない?」

呂禄「それは色々事情があって……」

酈寄「うん、気持ちはわかるよ。

   だけど諸侯や群臣は呂氏が何か悪いことをするんじゃないかって疑ってるよ?

   呂禄っちは何で将軍をやめて軍権を太尉(周勃)に返さないの?

   呂王(呂産)だって相国をやめて梁に帰るべきじゃない?」

呂禄「うう……」

酈寄「そうすれば斉王だって長安を攻撃するなんてやめてくれるよ!

   結果として他の諸侯や群臣だけじゃなく、呂禄っちだって安心できるでしょ?

   目先の利益より未来のことを考えようよ」

呂禄「ちょっと一族みんなに相談してみるね。

   ありがとう、酈寄っち」

 

なた「という会話があったのです」

コトタ「コミカル過ぎる……。

    それで呂禄はどうしたのです?」

なた「呂禄は親友が裏切るわけないと信じていたので、

   周勃へ軍権を渡すことを検討していたんですがね。

   呂氏一族の長老達に聞くと賛否両論でどうにもできなかったのです」

コトタ「やっぱり膠着しちゃう……」

なた「ある日、呂禄は酈寄と一緒に狩りに出かけました」

コトタ「本当に仲良しなんですねぇ」

なた「そこでの会話を見てみましょう」

コトタ「またコミカルが始まるーー!?」

 

酈寄「呂禄っち、呂氏のみんなは何て言ってた?」

呂禄「ごめんね、酈寄っち。

   賛成も反対も半々でなかなか決められないでいるんだ」

酈寄「そっかぁ……」

呂禄「あ、近くに叔母様(呂嬃)の家があるから寄ってもいいかい?」

酈寄「うん!」

呂禄「叔母様ー!こんにちはー!」

呂嬃「この馬鹿甥がぁ!!どのツラ下げてここに来やがったぁ!!」

呂禄「ひぃ!

   叔母様、そんなに怒ってどうしたんです!?」

呂嬃「あんたは上将軍という立場にありながら、

   軍権を周勃に返そうとしてるって聞いたわよ!!」

呂禄「今それを考えているとこなんです……」

呂嬃「馬鹿なあんたはわからないだろうけどね!

   少ししたらきっと呂氏は漢王朝にいられなくなるよ!」

呂禄「ええ……」

呂嬃「これも!あれも!こんなのも!全部いらない!!」

呂禄「ああ、高価な金銀財宝じゃないですか……。

   何で捨てようとするのです?」

呂嬃「どうせ他人に奪われるぐらいなら大事にしてる必要なんてない!

   全て捨ててしまえばいい!!!」

呂禄(ヒステリック怖いよぉ……)

 

なた「呂嬃は何かを知っていたのか、知らなかったのか、

   呂氏が誅滅される未来を予測していたようでしてね」

コトタ「さすが呂雉の妹……」

なた「その頃、もう1つの動きがありました。

   曹窋って覚えてます?」

コトタ「曹参の息子でしたっけ?」

なた「ですです。

   曹窋は御史大夫(副首相格)代行になってましてね。

   相国の呂産と今後について話し合っていたのです」

コトタ「曹窋は呂氏側!?」

なた「いえ、続きを聞いてください。

   話し合いをしていたところに、斉へと使者に出向いていた

   賈寿という人が帰ってきましてね。

   賈寿は宮殿の守備兵を管理する大臣なのですが、

   この人は呂氏側だったようで」

コトタ「ほほう」

なた「長安の外側、つまり斉や灌嬰の状況を知っている賈寿は

   手を拱いてる呂産を叱りつけます。

   "何をのほほんとしてるんですか!

    今すぐ宮殿に入って陛下(後少帝)を確保しなさい!"と」

コトタ「呂産は宮殿にいなかったのです?」

なた「南軍の指揮をしていたので、長安にはいたでしょうけど、

   皇帝のそばにはいなかったみたいですね。

   皇帝を擁していれば斉楚や灌嬰を逆賊扱いにできるのだから、

   すぐにでも動け!っていうのが賈寿の考えでした」

コトタ「それ程までに長安外は緊迫していたってことでしょうね」

なた「ですね。

   でもこの時、曹窋が呂産の側にいたのが賈寿の失敗でした。

   曹窋はすぐに周勃の元へ走り、状況を報告します。

   報告を聞いた周勃はすぐにでも北軍の軍権を奪わないと

   まずいと判断し、強行手段に出ようとします」

コトタ「おおっ!?」

なた「しかし周勃が北軍に入ろうとしても、兵符がない為拒否されちゃいます」

コトタ「やっぱり権限が大事か……」

なた「周勃には"だよねー!権限ないと無理だよねー!"なんて、

   そんな悠長なことは言ってられません。

   というわけで偽の詔勅を用いて、北軍に周勃を受け入れさせたのです。

   それでも軍権が呂禄の手元にあることは変わりません」

コトタ「ふむふむ」

なた「周勃は酈寄と典客(異民族管理担当)の劉揭に命じて、

   呂禄を騙す様に命じました。

   で、コミカル会話シーンをどうぞ」

 

酈寄「呂禄っちー!」

呂禄「お、酈寄っちじゃん。

   あと劉揭殿も」

酈寄「陛下の命令で太尉が北軍に来たんだけどさー。

   北軍は太尉に任せて、呂禄っちは趙を守ってほしいらしいよ」

呂禄「マジで?」

劉揭「大マジです。

   趙王は今すぐ上将軍を辞め、軍権を太尉にお渡しください。

   さもなければ災禍が及びますぞ」

呂禄「うわ、それは怖い!

   わかった!言う通りにするね!」

 

なた「呂禄は酈寄を信じ切っていた為、上将軍の将印を返上し、

   軍権を周勃に渡して趙へと向かったのでした」

コトタ「すんなり作戦成功ですか……」

なた「ですねぇ。

   さて、ここで誕生したのが"左袒"という言葉でしてね」

コトタ「えーっと?」

なた「一般的に"味方をする"って意味で使われている言葉です。

   どういう経緯で誕生したのか見ていきましょう」

 

周勃「よし、これで北軍の軍権は私が手にしたぞ。

   全軍をここに集めよ!!!」

副将「ははっ」

兵士「周勃様が新しい将軍みたいだぜ」

兵士「斉楚と戦うのかなぁ……」

兵士「周勃様は何と言うのかなぁ」

周勃「お前らよく聞け!!

   呂氏に味方する奴は右袒せよ!!

   劉氏に味方する奴は左袒せよ!!」

兵士「そんなの決まってる!

   俺らは劉氏の兵士だーー!!」

兵士「そうだそうだ!左袒するぞ!!!」

 

コトタ「……???」

なた「左袒ってのは左腕を袖から出して、上半身を裸にする動きでしてね。

   右袒はその逆です」

コトタ「遠山の金さん?」

なた「それです!!

   金さんが"この桜吹雪が〜"の時にやってるやつです。

   画像検索したらわかると思います」

コトタ「金さんの場合は右袒ですね。

    でも何でまた左なんです?」

なた「古来より左袒は礼儀に関する事、

   右袒は刑罰や悪に関する事と決まってたみたいです」

コトタ「なるほど。

    つまり北軍の兵士全員が劉氏に味方した、と」

なた「その通り。

   こうして北軍は劉氏側になったわけです。

   しかしまだ南軍が残っています」

コトタ「南軍の軍権を握る呂産が賈寿の進言で

    後少帝を確保しようとしていましたね」

なた「ですね。

   それを防ぐ為に曹窋が今度は陳平の元へ走っています。

   といったところで今回はおしまい」

コトタ「続きは次回で!!」

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