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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第108回

なた「108って数字は特別な感じしますよねぇ」

コトタ「煩悩?水滸伝?」

なた「まあそれらが理由ですね。

   この企画も第108回、何か特別な回になるかもしれません」

コトタ「ほほう?」

なた「では本編行っちゃいましょう!」

 

呂雉編 最終章・その2

なた「前回、劉章が呂氏に対して抵抗の意思を示しました。

   それでも呂氏の権勢は止まることを知りません」

コトタ「国政の上層部は呂氏派で固まってますしね」

なた「まずはその国政の上層部の1人であった陳平の話です」

コトタ「お、なたさんのお気に入り」

なた「陳平も実は漢王朝の現状に不満がありましてね。

   でも自分の力ではどうにもできませんし、

   下手に動いて災禍が及ぶのを怖がっていました」

コトタ「呂雉に阿諛追従してるのも、あくまで劉氏の未来の為でしたものね。

    陳平程の人が手を拱いているってのも凄い話で……」

なた「悩む陳平の元に現れたのが、さりげなく引退していた陸賈でして」

コトタ「南越の趙佗を臣従させた弁士でしたか。

    書経や詩経を用いて劉邦を諫言してた人」

なた「ですです。

   というわけで陳平と陸賈の会話を見てみましょう」

 

陳平「はぁ……。

   どうしたものかなぁ……」

陸賈「丞相、お悩みのようですね」

陳平「おお、陸先生、いつの間にこちらに?」

陸賈「私が部屋に入ったことも気付かない程にお悩みなんですねぇ」

陳平「先生は私が何で悩んでいるかお分かりでしょうか?」

陸賈「丞相は地位も名誉もお金も手に入れてますしねぇ。

   さらに何かを欲しがっているわけでもないでしょう」

陳平「そうですね……」

陸賈「ならば丞相のお悩みは呂氏一族と陛下のことでしょう」

陳平「はい、先生の仰せの通りです。

   私はどうすればよろしいでしょうか」

陸賈「天下が安定している時は宰相が注目され、

   天下が乱れている時は将軍が注目されます。

   宰相と将軍の2人がしっかり手を組んでいれば、

   群臣は皆従い、変事が起きても大きく揺らぎません。

   漢王朝の未来は2人の手によって握られているのです」

陳平「2人……。

   宰相は私だとして、将軍は周勃殿ですか……?」

陸賈「ええ。

   その太尉(周勃)にも同じ話をしに行こうと思ってるんですがね。

   あの人はいつも冗談ばかりで、まともに私の話を聞いてくれないんですよ」

陳平「私も周勃殿は昔から少し苦手でしてね。

   あまり仲が良くないのです」

陸賈「それでは漢王朝の未来が暗くなってしまいますよ。

   未来の為にも太尉と仲良くなさってください」

陳平「わかりました。

   先生の言う通りにしましょう」

 

なた「陳平は陸賈に言われた通り早速周勃と親交を深めました。

   そして2人は呂氏を打倒する為に動き始めたのです」

コトタ「おお……!!!」

なた「ただ2人の動きはまた後日として、ここからは呂雉の話。

   紀元前180年に入ります」

コトタ「えーーー!

    もっと陳平や周勃の話してくださいよー」

なた「物事には順序ってのがありますから我慢してください!」

コトタ「はーい……」

なた「呂雉が長安の近くでお祓いの儀式をしました。

   その帰り道で呂雉は青い犬の様な謎の生き物と遭遇したのです」

コトタ「また奇怪なお話ですか……」

なた「だって歴史書に書いてるんですもの!!

   その青い犬は呂雉の脇の下まで近づき、少ししてから姿を消しました」

コトタ「ええ……」

なた「呂雉はこの出来事を占い師に聞いたところ、

   "劉如意の呪い"という結果が出たのです」

コトタ「その占い師殺されてません……?」

なた「記述がないので……わかりません」

コトタ「ひぃ……」

なた「この出来事の直後から呂雉は脇の病気に罹ってるんです。

   脇の病気ってのが想像しづらいのですが、恐らく腫物でもできたのでしょう」

コトタ「悪女って聞くと若々しい美女を思い浮かべますが、

    呂雉もかなり老齢でしょうし、病気のダメージは大きそうですね」

なた「ええ。

   それもあってか、呂氏の権力をさらに固めようとしてましてね。

   魯王の張偃(呂雉の外孫)が幼いのに父母を亡くして一人ぼっちなのを哀れんで、

   異母弟の張侈と張寿をそれぞれ新都侯、楽昌侯に封じて張偃を補佐させています」

コトタ「"哀れんで"前後が微妙に繋がっていない様に感じますが……」

なた「"哀れんで"は建前ですからね。

   本音はあくまでも呂氏の権力固めですし」

コトタ「なるほど……」

なた「それと前回登場した呂雉お気に入りの宦官の張釋も建陵侯に封じられています。

   さらに宦官でも各部署のトップ2全員を関内侯に封じていまして」

コトタ「関内侯が封地無しとは言え、さすがにやり過ぎでは?」

なた「私もそう思います。

   でももう呂雉には余裕がなかったのでしょう。

   少しでも呂氏の権力を強固にしようとしたかった理由があったんです」

コトタ「まさか……」

なた「そのまさかです。

   呂雉は呂王の呂産と趙王の呂禄を呼び出して話し始めます」

 

呂雉「我が夫(劉邦)は天下を平定してから、

   "劉氏以外が王を名乗ったら天下を挙げて討て"と群臣と白馬の盟を結びました。

   しかし今では3人の呂氏が王になっており、諸侯や群臣はそれを不満に思っています。

   私はもうそろそろ死ぬでしょう。

   群臣がそれを機に動いてくる可能性があります。

   絶対に兵権は誰にも渡さず、宮殿と天子(後少帝)をお守りしなさい。

   私の葬儀に手をかけ過ぎて、群臣にチャンスを与えないようにしなさい」

 

なた「こうして史書では始皇帝や項羽、劉邦と並んで皇帝同等に扱われ、

   後世では中国三大悪女とも呼ばれる呂雉がその生涯を終えました」

コトタ「最後の主人公が亡くなった……。

    第108回が特別な回云々はこれのことだったんですね……」

なた「ちなみに呂雉の治世についてですが、別して評価は低くありません」

コトタ「意外過ぎるんですが……」

なた「"天下は安定し、犯罪者も少なく刑罰が多くなかった。

    民は農業に励んで、衣食も豊かだった"と記述があるぐらいです」

コトタ「ほええ……」

なた「ただ"性格は残忍で、天下を私物化した悪逆な人物"という評価も

   しっかり書いてあるんですけどね」

コトタ「そりゃそうでしょう!!

    それにしても呂雉の遺言ですが、何故宮殿と天子を守れって言うんです?」

なた「兵権と皇帝を確保していれば呂氏が官軍を率いることになるでしょう?

   何か変事があっても、相手を逆賊として処理できますから」

コトタ「権力への執念が凄まじいですね……」

なた「"家"が最優先される時代ですからねぇ。

   呂雉は遺詔で呂産を相国に、呂禄の娘を皇后に指名していますし、

   遺詔には含まれてませんが、この時期に左丞相の審食其を太傅に任じてます。

   こちらは実権を奪う為に太傅にさせられた王陵とは意図が違うでしょうね」

コトタ「漢王朝には蕭何、曹参、董卓(後漢)以外に相国が

    もう1人いるって言ってたのは呂産だったんですね」

なた「ですです。

   呂雉が亡くなっても呂産が政権を、呂禄が兵権を握っていたので、

   呂氏の権力は今後も変わらず安泰だと思われていました。

   ですが呂産も呂禄も不安を感じていたのです」

コトタ「何故です?」

なた「やっぱり白馬の盟の影響が大きかったのでしょうね。

   それを理由に劉氏諸侯王や群臣が呂氏誅滅に動くことを恐れてたのですよ」

コトタ「でも政権も兵権も握ってて、呂雉の言葉通り皇帝も確保してるなら

    先んじて動けば何とでもなるんじゃ?」

なた「動こうとは考えてたんですがね。

   やっぱり建国の功臣でもある陳平や周勃、

   それに灌嬰ら愉快な仲間達に対抗するのはそう簡単じゃなくて、

   動くに動けなかったみたいでして」

コトタ「呂雉の死で呂氏の権力は変わらずとも、

    天下に対する影響力は落ちてるでしょうしね」

なた「そうなんですよ。

   呂雉は皇帝同等の扱いを受けた皇太后でしたが、

   呂氏自体はただの外戚ですし、あくまで皇帝権力は劉氏なんですよ。

   確かに皇后や諸侯王、相国までもが呂氏で固まってますが、

   白馬の盟を破ったという事実もあって、天下の大義は呂氏から離れていたわけです」

コトタ「それこそ冒頭の陳平と同じで"下手に動いても災禍が及ぶ"って状況ですね」

なた「ですねぇ。

   劉氏側も呂氏側も互いに出方を伺っていたってとこでしょう。

   しかし歴史の神様は膠着を好みませんでした」

コトタ「お……?」

なた「次回、若き劉氏が動きます!!」

コトタ「おおお!?

    それでは次回の教えて!項羽と劉邦をお楽しみに!!」

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