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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第107回

なた「ここ3回の間で一気に10年程時代が進みました」

コトタ「今回は紀元前181年の続きでしたね」

なた「ですね!

   今回から呂雉編の最終章を始めたいと思います」

コトタ「呂雉を早くどうにかして欲しいので、

    早速本編お願いします!!!」

なた「合点!!!」

 

呂雉編 最終章・その1

なた「最終章を始めるにあたって、突如出てくるのが営陵侯の劉沢という人物。

   大将軍とも、単なる将軍とも記述があって正確な地位は不明なのですが、

   間違いなく高い地位にあった人でしてね」

コトタ「ちゃんとした劉氏なんです?」

なた「ええ。

   劉邦の祖父の兄弟の孫に当たる人ですね」

コトタ「それだと劉邦と同世代の遠い親戚になるのかな……?」

なた「ですです。

   それでいて劉氏では最年長なので、まあ一族の長老格ってとこでした。

   ちなみに劉沢の妻は樊噲の娘です。

コトタ「つまり呂嬃(呂雉の妹)の娘ってことですか」

なた「そういうことです。

   劉沢は陳豨との戦いで活躍し、

   王黄を討ち取った功績で営陵侯に封じられてましてね。

   ただ呂氏ですら王になってるのに、劉氏の長老の自身が

   王になれていない現状に不満だったようです」

コトタ「確かに、その不満は間違ってないですね」

なた「そこで田生という弁士が劉沢の為に動き始めました。

   呂雉が寵愛している宦官の張釋にこう話すのです。

   "呂氏の王が立ったとは言え、まだ群臣は呂氏に完全には服しておりません。

    劉沢様は劉氏の長老です。彼を王にするように太后(呂雉)へ進言すべきです。

    そうすれば呂氏の権力も安泰でしょう"と」

コトタ「うまい言い分ですねぇ」

なた「張釋から話を聞いた呂雉は、

   自分が亡くなってから劉沢が呂氏の脅威になると考え、

   劉沢を瑯琊王に封じて機嫌取りをしています」

コトタ「本当に突如出てきましたが、劉沢がこれから重要な人物になるんです?」

なた「うーん……。

   それ程重要ってわけではないですが、紹介はしておかないといけない人ですね。

   どっちかというと次に紹介する人のが重要でして」

コトタ「ほう?誰です?」

なた「朱虚侯の劉章です。

   前回ちょっとだけ登場させてるんですがね」

コトタ「えーっと呂禄の娘を娶ったんでしたっけ?

    亡き斉王の劉肥の息子ですよね」

なた「ええ。

   劉章はこの頃20歳を過ぎたばかりでしたが、

   呂氏が劉氏を凌いで権勢を振るってるっている状況に

   イライラしておりました」

コトタ「でも若さだけじゃ強大な呂雉や呂氏には敵わない?」

なた「それがそうでもなくて……。

   ある時、呂雉が酒宴を開いたのですが、劉章を酒吏に指名しましてね」

コトタ「酒吏?」

なた「宴会の幹事というか進行役でしょうかね。

   酒宴が始まり、劉章は呂雉に言います。

   "俺は武将として生まれ育ったので、軍法に則って酒宴を進行しますね"と。

   呂雉はそれを認めました」

コトタ「軍法に則った酒宴ってどういう……」

なた「まあすぐにわかりますよ。

   とりあえずここからは会話シーンを見てください」

コトタ「はーい」

 

劉章「太后の為に耕田歌(農業の歌)を歌ってもよろしいでしょうか?」

呂雉「ははっ、何を言うか。

   お前の父(劉肥)なら農民時代があるから農業のことをわかるだろうが、

   お前は生まれた時から皇族なのだしわかるはずもなかろう?」

劉章「いえ、俺はわかりますので歌わせてください」

呂雉「そこまで言うなら歌うが良い」

劉章「深耕穊種、立苗欲疏。非其種者、鋤而去之!!!」

呂雉「ぐぬぬ……」

 

なた「というわけです」

コトタ「いやわかりませんから!!!」

なた「いつものトンデモ意訳をしますと……、

   "深く耕したら種が増えた。苗はどんどん広く植えちゃおう!

    でも違う種があるなら鋤を使って取り除いちゃおう!"

   ってことでして」

コトタ「それで何故呂雉が"ぐぬぬ"となってるんです?」

なた「前半部分は劉氏が栄えて漢王朝を打ち立てたことを表してまして、

   後半部分は違う種、つまり呂氏を追い出そうってことだそうです」

コトタ「わーお……」

なた「なかなか強気でしょう?

   この酒宴はこれだけでは終わらなくてですね。

   呂氏の1人が飲みすぎたのか酒宴から逃げてしまいました。

   すると劉章はそれを追いかけて斬り殺したのです」

コトタ「えーーーーーーー!?」

なた「会場に戻って呂雉に報告します。

   "軍法に則って死罪にしました"と」

コトタ「いやいや……。

    さすがに一族の者が殺されたなら呂雉も許さないんじゃ……」

なた「軍法に則って酒宴をするのを呂雉が認めちゃってるので、

   罪に問うこともできなかったみたいです。

   この一件は結構影響が大きかったようでしてね。

   劉章は呂氏から恐れられるようになり、それだけでなく

   群臣も劉章を頼るようになり、劉氏の勢いが盛り返すことになってるんです」

コトタ「呂氏に真っ向から対抗する姿勢を公の場で見せたのが大きい、と」

なた「ですね。

   この流れでもう1人の劉氏についても話しておきましょう。

   趙王となった劉恢(劉邦の息子)なんですが」

コトタ「元々梁王でしたっけ。

    呂産が梁王に遷る際に封地替えされたんでしたよね」

なた「劉恢はその封地替えを不満に思ってましてね。

   しかも劉恢は呂産の娘を娶っており、

   趙の臣もほとんどが呂氏関係者という状況。

   その為、行動や言動を監視されていて、王なのに自由が全くなかったのです」

コトタ「ふむふむ」

なた「そんな劉恢は呂産の娘ではなく別の姫を寵愛してましてね」

コトタ「あれ……?

    デジャブなんですがそれ……」

なた「劉友とほぼ同じパターンですしね。

   ただ結果が微妙に違ってまして、呂産の娘がその寵姫を

   毒殺しちゃいまして、劉恢はその悲しみから自殺してるんです」

コトタ「ええ……」

なた「"劉恢は女が原因で国を捨てて自殺した"と呂雉は言い、

   劉恢の子孫に後を継ぐことを禁止させたのでした」

コトタ「そうなると趙王は空位に?」

なた「いえ、すぐに呂禄(呂釋之の息子)が趙王に封じられています。

   なので父親の呂釋之も趙王に追尊されてまして」

コトタ「劉氏の王が死んだら呂氏の王が増えた!?

    自殺じゃなくて呂氏による他殺だったんじゃ……?」

なた「実質そうでしょうけどね。

   でも呂雉は呂禄を封じる前に、代王の劉恒に趙王へ遷る要請をしてるんです。

   "匈奴と接する国境の防備の為に代王として残りたい"と劉恒は返事し、

   沙汰止みになっていますが」

コトタ「ふむう……」

なた「で、また劉氏のお話」

コトタ「4人目ですね」

なた「燕王の劉建(劉邦の息子)が亡くなってましてね。

   ただ"亡くなった"とあるので病死だとは思うのですが、

   この後の展開から考えるとやっぱり呂氏が関与してる可能性大でして」

コトタ「何があったんです……?」

なた「劉建には息子がいたので、本来ならその息子が燕王を継ぐはずなんですが、

   呂雉の手の者によって暗殺されちゃってるんです」

コトタ「あからさまじゃないですかーーーー」

なた「それで燕王に封じられたのが呂通(呂台の息子)でしてね。

   コトタさんの仰る通りあからさまだと思います」

コトタ「これで呂氏諸侯王が3人(呂王、趙王、燕王)ですか……」

なた「死んだ呂台(呂王)も含めれば合計4人が呂氏で王になってますね。

   追尊も含めれば呂雉の父と兄2人も王になってるので合計7人。

   あえて言えば呂雉の外孫にあたる張偃も魯王なので、

   呂氏関係者だけで合計8人も異姓諸侯王が出てるのです。

   春秋戦国時代や項羽の封王、それに劉邦の統一直後の封王もあって、

   異姓諸侯王自体はおかしくもないのですが、

   それでも白馬の盟(劉氏以外が王になるのを禁止した盟約)がありましたので、

   かなり異常な状況だったと言えるでしょう」

コトタ「恵帝の息子ってことになってる淮陽王の劉武、常山王の劉朝、

    済川王の劉太も劉氏かどうか微妙みたいですし、

    間違いなく劉氏の血筋の諸侯王って誰が残ってるんです……?」

なた「紀元前181年時点だとの6人、

   楚王の劉交(劉邦の弟)、代王の劉恒(劉邦の息子)、淮南王の劉長(劉邦の息子)、

   呉王の劉濞(劉邦の甥)、斉王の劉襄(劉邦の孫)、瑯琊王の劉沢(劉邦の一族)ですね」

コトタ「劉氏か微妙な3人を加えると呂氏系の諸侯王は7人……?」

なた「長沙王の呉右が劉氏寄りなのか呂氏寄りなのか不明確なので、

   王の数だけならほぼ拮抗してる感じですねぇ」

コトタ「呂雉の絶対的な力を考えると、拮抗というより劉氏不利ですよね……。

    漢王朝は一体どうなってしまうのか……」

なた「コトタさん、忘れてますよ。

   漢王朝には劉氏と呂氏以外にも頼れる人達がいるでしょう?」

コトタ「ん……?

    あっ!愉快な仲間達!!!」

なた「正解!!!

   蕭何や曹参、樊噲は亡くなりましたが、

   まだまだ陳平や周勃、灌嬰が残ってますからね。

   彼らがどう動くのかは次回以降話していきます」

コトタ「じゃあ今回は終わりですね」

なた「ですねー」

コトタ「それでは次回をお楽しみに!!!」

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