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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第104回

なた「前回、楚漢戦争の功績第一とされた蕭何が亡くなりました」

コトタ「そして曹参が相国の後を継いだんでしたね」

なた「ですね。

   割と漢王朝は平和な時期に入ってはいたのですが、

   実はその裏側では呂雉がまた悪事を働こうとしてましてね」

コトタ「宮中でのお話ってことですね」

なた「今回はそこらを見ていこうかと」

コトタ「はーい」

 

ワガママ女

コトタ「またストレートなサブタイトルで」

なた「もうこれ以外思いつかなくて……。

   えーっと、斉王の劉肥が長安に来ましてね。

   呂雉と恵帝と共に酒宴を開いたのですが、ここで事件が起きてるんです」

コトタ「劉如意の次は劉肥ですか……」

なた「劉肥は庶長子ですからある意味1番恵帝を脅かす存在と思われてたのでしょう。

   実際、劉邦が斉王に封じていることからも信頼の高さはわかりますし」

コトタ「お母さんの地位が低いんでしたっけ?」

なた「曹氏ってことしかわかってないですからね。

   ドラマだと劉邦の地元の酒場の女主人って設定でした。

   まあ妻だったのか、ただの愛人だったのかも微妙なところです」

コトタ「その劉肥に何が起きたんです?」

なた「朝廷みたいな公の場では君臣の関係になるので、

   当然恵帝が上座に座るのですが、宮廷内だと家族の関係になるのもあって、

   恵帝自ら兄の劉肥に上座を勧めたみたいなんです」

コトタ「あー……、なんか問題になりそうですね……」

なた「ええ。

   呂雉はそれを見て怒っています。

   怒りの理由は単純に"うちの息子差し置いて何上座座ってんねん!"でしょう」

コトタ「でしょうね……」

なた「というわけで呂雉は側近に毒酒を2つ用意させて、

   自分の前に1つ、もう1つは劉肥に渡したのです」

コトタ「何故自分の前にも?」

なた「"これは私も飲む安全な酒だよー!"って意味でしょうかね。

   そして"立って乾杯しましょう"って話になったところ、

   恵帝が何かを察したのか、呂雉の前にあるコップを持って、

   "兄上一緒に乾杯しましょう"と言い出したのです」

コトタ「恵帝も毒酒を!?」

なた「呂雉はびっくりして恵帝の持った毒酒入りコップをはたき落とします。

   事情を知らない劉肥は"え?何で?"となりましたが、

   恵帝同様に危険を察したのか酔った振りをしてその場は退席したのでした」

コトタ「呂雉もやりたい放題過ぎませんかね……」

なた「権力ってのはそういうものですから……。

   さて後に"あれは毒酒だった"と劉肥が知ったのですが、

   "あれ?俺は斉に帰れるのか?長安から出られるのか?"と

   不安になったのです」

コトタ「そりゃそうでしょう。

    劉如意や戚夫人の件もあったのですし」

なた「それだけじゃなく韓信や彭越のこともありますからね。

   ここで劉肥に同行していた斉の役人が呂雉の機嫌取り作戦を提案をしたのです」

コトタ「ほう?」

なた「"殿下(劉肥)は斉の70城を有しているでしょう?

    太后(呂雉)のお嬢様(魯元公主)は食邑をいくつかしかお持ちではありません。

    ここは1つの郡をお嬢様へ献上するのがよろしいでしょう。

    そうすれば太后は喜びますし、殿下は命の危機から免れることでしょう"

   という提案です」

コトタ「そんなことで呂雉が満足しますかね……?

    むしろ"全部の城を寄越せ!"ぐらい言ってきそうな……」

なた「意外にも呂雉は喜んで申し出を受け入れてますね。

   で、劉肥は無事帰国しています」

コトタ「ほっ……」

なた「そして年が明けて紀元前192年となりました」

コトタ「ペースが早くなってきてますね」

なた「まあ平和な時期ですから……。

   あ、忘れてました。劉邦の次兄である劉喜が死んでいます」

コトタ「最近呉王に封じられた劉濞の父親でしたね」

なた「それとこの数年の間に地震やら旱魃やら大きな火災やらが立て続けに起こってましてね。

   冬なのに桃の花が咲いたり、落雷が多かったりなんてのもあります。

   血の雨が降ったなんて記述もあったり、平和ですけど色々カオスな時期でもありましてね」

コトタ「君主がダメダメだと天災が起こるって考えがあるんでしたっけ?」

なた「そうですね。

   この場合の君主は恵帝というより呂雉なのでしょうけど。

   それでは本筋に戻しますが、ここでサブタイトル変更」

コトタ「お?」

 

匈奴からのラブレター

コトタ「ええ……」

なた「久しぶりに登場の冒頓のお話なんですがね。

   その冒頓が呂雉に手紙を送っているんです」

コトタ「それがラブレター?」

なた「では手紙の中身を見てみましょうか」

 

冒頓「呂雉ちゃん、お久しぶりです!

   劉邦が死んじゃったって聞いたんだけど、元気?

   1人だと寂しくない?俺も今1人で寂しいんだよね。

   もし良かったら俺と結婚しない?」

 

コトタ「ふざけてます?」

なた「いえ、内容的にこんな感じなんです。

   ここまでノリノリではないですけど」

コトタ「呂雉はどう返事を……?」

なた「返事の前にまずブチ切れてますね。

   "使者を斬って匈奴に攻め込むぞ!"っていう勢いでしたし」

コトタ「そこまでですか」

なた「群臣を集めて協議させてるんです。

   相国の曹参はもちろん、陳平や樊噲、それに季布」

コトタ「季布はえーと……」

なた「第76回を読んで頂ければ思い出すかと」

コトタ「ああ、項羽軍の武将だったけど劉邦に許されて漢王朝に仕えた人ですね」

なた「ですです。

   さて協議の内容なんですが、

   "姉貴(呂雉)が馬鹿にされて黙っていられるか!

    俺が10万を率いて匈奴をボコボコにしてくるぜ!!"

   と樊噲が息巻いています」

コトタ「樊噲はいつまでも樊噲らしいですね」

なた「で、その樊噲に異を唱えたのが季布なんですよ」

コトタ「だから名前を出したんですね」

なた「ええ。

   季布の言葉はこんな感じです」

 

季布「樊噲は処刑すべきです。

   かつて先帝(劉邦)が匈奴を攻めて平城で包囲された時、

   樊噲が総司令となって率いた軍は32万でしたが、

   包囲を解くことはできませんでした。

   その頃で傷ついた将兵らも漸く復帰したばかりという状況です。

   そんな中、樊噲はたった10万で匈奴を倒すだなんて言ってますが、

   寝言は寝て言えってものでしょう。公の場でウソを付くことは処刑に値します。

   それに異民族なんてのはチンパンジーみたいなものなんですから、

   奴らに良いことを言われても喜べませんし、

   況して悪いことを言われても怒る必要なんてないでしょう」

 

コトタ「樊噲はどうなったのです……?」

なた「処刑はされていません。

   大事なのは季布の言葉の最後の部分ですね。

   "怒る必要なんてない"ってことです」

コトタ「つまり?」

なた「呂雉は季布の言葉を"それもそうね"と採用し、

   使者に返書を持たせています」

 

呂雉「冒頓単于、我らの邑(謙遜した表現)を忘れず、

   手紙を送ってくださいまして、ありがとうございます。

   ただ単于は勘違いしていらっしゃいます。

   私はもう老いてしまい、白髪まみれで歯も抜けており、

   歩くのすらままならない状態です。

   きっと単于は私の若い頃の話を聴いて、結婚をお考えになったのでしょう。

   私なんかを娶って自分を汚す必要はございません。

   しかし単于、お怒りにならないでください。

   我らの邑には罪はありません。あくまで私の罪です。

   私は個人的に車を2つ、馬を8頭所有しているので、

   それらをお送りします。お使いください」

 

コトタ「呂雉と思えない謙虚さ……」

なた「まあ口では何とでも言えますからね」

コトタ「冒頓はこれにどう応じたのです?」

なた「すぐに匈奴から再び使者が来てましてね」

 

冒頓「中華の礼儀を私は知りませんでした。

   無礼があったみたいで本当にごめんなさい!!

   陛下(この場合呂雉)にお許しを頂けて本当に嬉しいです。

   お返しに匈奴の馬をお送りしますね!!」

 

コトタ「あれぇ……?」

なた「君主同士の建前と世辞を使いこなしたやり取りでしょうね。

   このやり取りの結末としては、いつぞや劉邦がした事と同じでして」

コトタ「劉邦がしたこと?」

なた「皇室の娘を公主と偽って冒頓に嫁がせているんです」

コトタ「このやり取りが八王編でも活躍した劉淵(前趙の建国者)へ繋がっていくんですねぇ」

なた「そういうことです。

   さて、さらに時が流れて紀元前191年に入ります」

コトタ「えっ」

なた「が、特に大きいイベントはないんですよね。

   あえて言うなら張氏が皇后に立てられてるんですけど」

コトタ「張氏……?

    あ、張良の孫娘とかでしょうか」

なた「いえ、張敖の娘です」

コトタ「ん……?」

なた「恵帝の姉である魯元公主の娘です。

   魯元公主は張敖の妻ですから」

コトタ「自分の姪を娶った……?」

なた「そういうことになりますね。

   あくまで張氏であって劉氏ではないので問題なかったのでしょう。

   現代倫理だと問題ありまくりですが」

コトタ「でもそれが"あえて言う"程のことでしょうか?」

なた「ええ。

   この婚姻は呂雉の権力固めの一環ですからね。

   近い血筋で皇帝周辺が固まっていれば何も恐れないでいいですし。

   ここで別の有力者の子女が皇后になっていたら、

   外戚同士の争いが激化するだけでしょう?」

コトタ「そうですね……」

なた「では今回はここら辺で終わります。

   次回から紀元前190年に入ります」

コトタ「一気に進んでいきますね!?

    終わりが近いってことでしょうか……!

    次回の教えて!項羽と劉邦をお楽しみに!!!」

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