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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第102回

なた「コトタさんは前回の最後で疑ってましたが、

   今回からは本当に呂雉編がスタートします」

コトタ「そりゃこれまでを考えたら疑いたくもなりますよ!」

なた「そこまで言わなくてもーーーー!」

コトタ「冗談ですよ。

    さあ本編を始めてください!!」

なた「合点承知!!!」

 

中国三大悪女

コトタ「なかなかストレートなサブタイトルですね」

なた「世界三大悪女って言葉も存在しそうですが、一般的にはありません。

   ですが中国三大悪女ってのは一般的にもありましてね」

コトタ「誰が入ってるんです?

    八王編の賈南風とか?」

なた「賈南風は悪女なのは間違いないですが、他と比べると小物過ぎますね。

   まずコトタさんが嫌いな紂王の奥さんである妲己、

   次に唐代の則天武后、そして主役の呂雉が入っているのです」

コトタ「則天武后のことはよく知りませんが、

    呂雉はあの妲己と並ぶだけの悪女だってことですか?」

なた「後世の評価、というか当時でもそういう評価だったでしょう。

   強い女性なんてレベルではないのです」

コトタ「ほええ……」

なた「則天武后は中国史上唯一皇帝に即位した女性でしてね。

   詳しくはいずれ教えて!隋唐でやるかも知れませんが……」

コトタ「またそのパターンですか……」

なた「呂雉は皇帝には即位していないものの、

   歴史書的には皇帝と同列に語られている存在なのです。

   つまり中国史上初めて皇帝権力を握った女性が呂雉と言うわけです」

コトタ「歴史書的に?」

なた「史記の本紀には五帝、夏、殷、周、始皇帝以前の秦、

   始皇帝、項羽、劉邦の次に呂雉が名を連ねているのです。

   呂太后本紀と言うものなんですがね」

コトタ「そう言えば呂雉の初登場の時に仰ってましたね。

    秦始皇本紀、項羽本紀、高祖(劉邦)本紀に続いて、

    呂雉の本紀が立てられているって」

なた「ですです。

   本来なら恵帝の本紀が立てられて然るべきなんでしょうけど、

   そちらは史記には無く、呂雉の次は文帝、景帝、武帝と続いているのです。

   史記は武帝期に司馬遷が著した史書なので、それ以降はありませんが」

コトタ「つまり劉邦、恵帝、文帝となるはずが劉邦、呂雉、文帝になってしまった、と」

なた「呂雉が権力を握ってる間に恵帝含めて3人の皇帝がいるんですがね」

コトタ「えっ」

なた「この企画の真の最終章である呂雉編はそこのお話をやるってわけです。

   文帝以降についても最終回付近で少しは触れる予定ですが」

コトタ「それにしても悪女エピソードがそんなにあるんですか?」

なた「早速話していきましょうかねぇ」

コトタ「お願いします」

なた「じゃあコトタさん、

   呂雉がこの頃に一番嫌っていたのって誰だと思います?」

コトタ「うーん……。

    やっぱ裏切った盧綰だとか、残りの異姓諸侯王の呉臣でしょうか」

なた「不正解!」

コトタ「えー……」

なた「正解は戚夫人と劉如意です」

コトタ「ああ……。

    恵帝(呂雉の息子)と劉如意(戚夫人の息子)の後継者争いが

    ずっと続いていたわけですものね」

なた「先帝である劉邦が何度も立太子しようとしていたことは

   朝廷でも歴然の事実ですからね。

   つまり年少だとは言え、恵帝に匹敵する存在に代わりはなかったわけです。

   当初群臣は反対していたとは言え、呂雉に対抗すべく重臣が劉如意に接近して

   皇帝を挿げ替えるような事件が起きないとは限らない。

   実際に三国時代だと司馬師や司馬昭が皇帝を替えてますからね。

   これは朝廷での主導権争いで後継者争いではありませんが」

コトタ「後継者争いだと曹丕が曹植を徹底的に潰そうとしてましたものね。

    袁譚と袁尚も袁紹死後にやり合ってましたし、

    それこそ孫呉中後期の二宮の変なんてのも」

なた「そういうことです。

   後継者争いってのは立太子や即位だけで終わりません」

コトタ「どうなれば終わりなんです?」

なた「相手が死ぬことです」

コトタ「やっぱ……そうなりますよね……」

なた「まず呂雉は後宮の女罪人が幽閉される場所に

   特に罪がない戚夫人をぶちこんじゃっています」

コトタ「そんなことができるんですか!?」

なた「皇太后だからと言ってできるはずはないんですがねぇ……。

   戚夫人は髪を剃られ、首枷に囚人服という姿で米をつく仕事を課されたのです。

   先代皇帝の寵姫とは思えない扱いでしょう?」

コトタ「そこまでしなくても……」

なた「まだこれは序の口なんですがね。

   作業をしながら戚夫人はこんな詩を歌いました。

   "息子は王なのに、母は捕らえられ、朝から夜まで米をつく生活。

    いつも死と隣り合わせ。息子とは三千里も離れている。

    どうやってお前にこの事を伝えれば良いのか"と」

コトタ「最後の"お前"ってのは劉如意にってことですね」

なた「ですね。

   呂雉はこの話を聞いてブチギレです。

   "お前は自分の息子を頼ろうとするのか!!!"と怒鳴り、

   劉如意を殺してしまう決断をしたのでした」

コトタ「はぁ……」

なた「呂雉は趙(劉如意は趙王)へ使者を送り、劉如意を長安に呼び出します。

   何度か使者が往復するも、趙の宰相である周昌が拒みます。

   "私は先帝(劉邦)に王様(劉如意)を任せられました。

    太后(呂雉)が戚夫人を恨んでいることはよく知っています。

    王様を呼び出して2人を殺そうとしているのでしょう。

    それならば王様を長安へ送ることは同意できません"と」

コトタ「わーお、周昌も結構強気ですね」

なた「呂雉は周昌に恵帝の立太子の件で恩義があるので、

   ある程度は尊重したのかも知れないですねぇ。

   ただやっぱり戚夫人と劉如意の親子を許せない呂雉は

   まずは周昌を長安へ呼び出して、周昌が到着してから

   改めて劉如意へ使者を送ったのです」

コトタ「周昌は性格上そうされたら長安に行くしかないでしょうしね……」

なた「ええ。

   それに周昌がいないとなれば劉如意も長安へ行くしかなくなったのです。

   ここで恵帝について劉邦が"アイツは後継者に向いていない"と評価した性格が

   発揮されています」

コトタ「えーっと、優しすぎるんでしたっけ?」

なた「その通り。

   恵帝は呂雉が劉如意を殺そうとしていることを察知し、

   自ら長安の東にある霸上という地まで劉如意を出迎えています。

   そして2人で宮殿に入り、寝起きも飲食も共にしたそうです」

コトタ「劉如意に手を出させないようにした?」

なた「でしょうね。

   自分が争った相手にも関わらず、あくまで弟として守ろうとする優しさは、

   個人的には好きなんですけどね。ただ恵帝は呂雉が戚夫人を囚人にしたこと

   は止めることはできてないので、そんな中途半端な優しさだけでは君主としてどうなのか、

   って劉邦は考えたのでしょう」

コトタ「上に立つ者が優しいだけじゃダメなのはわかります」

なた「さて、年が明けて紀元前194年となりました。

   恵帝は朝早く起きて狩りに出かけたんですが、

   劉如意はまだなんだかんだで子供なので朝早くに起きること

   ができませんでした」

コトタ「まさか……」

なた「呂雉はそれを知ると劉如意を毒を飲ませ、

   恵帝が戻った時には劉如意は死んでいたのです」

コトタ「やっちゃいましたか……」

なた「そして戚夫人にも直接的な手段を取ります。

   こればかりは残酷過ぎて書きたくなかった内容なんですが……」

コトタ「そんなにもですか……?」

なた「恵帝が曰く"人が人にすることじゃない"って程ですよ。

   呂雉は戚夫人の目玉を抉り出し、薬草を燻って耳を聞こえなくした上に、

   声が出なくなる薬まで飲ませて、手足を切断してトイレに住まわせたのです

※表現が人によってはきつすぎる内容なので、反転して読んでください

コトタ「……」

なた「言葉を失うでしょう?」

コトタ「はい……」

なた「そしてそんな状態の戚夫人を人豚と名付け、

   恵帝に"トイレに人豚がいるので"と誘って見せつけたのです」

コトタ「頭がおかしすぎる……」

なた「恵帝はその人豚が戚夫人であると知り、

   またこの悪魔の所業をしたのが呂雉であるとわかり、

   大泣きして1年以上寝たきりになる程の病に陥ったのでした」

コトタ「誰でもそうなると思います……」

なた「恵帝は呂雉に使者を送りこう伝えさせます。

   "あれは人が人にすることじゃありません。

    私は太后の息子として、今後天下を治めることはできません"と」

コトタ「あらら……」

なた「以来、恵帝は酒色に溺れて政治を顧みることはほぼなくなったそうです。

   これが恵帝の"君主としての問題点"だったのでしょう。

   優しいと言ってしまえばそれまでですが、君主となったからには

   臣民の為に立たなくてはならないのですから。

   しかも母親を咎めはしたものの、止めることはしていないのです。

   できなかったが正しいかも知れませんが……」

コトタ「その後どうなったのです?」

なた「後処理としては淮陽王の劉友が劉如意の代わりに

   趙王に封地替えされたぐらいでしょうかね」

コトタ「ふむ……」

なた「これは呂雉の権力が絶対的になった瞬間とも言えるでしょう。

   実子の皇帝ですらが止められないんですから。

   それに外戚である呂氏も当然ですが力を持っています。

   兄2人も妹も列侯されていますし」

コトタ「劉邦が彭城で項羽に破れて失墜した時に登場した呂沢、

    それと四皓を召し出した建成侯の呂釋之が兄2人ですね。

    妹は樊噲の妻の呂嬃でしたね」

なた「はい。

   呂沢は周呂侯、呂嬃は臨光侯に封じられていますね。

   呂沢は紀元前199年に亡くなっており、息子の呂台が周呂侯を継いでいますが」

コトタ「つまり外戚として力を持っていたのは主に呂台と呂釋之ですかね」

なた「あとは呂台の弟の呂産、呂釋之の息子の呂則、呂種、呂种、呂禄なんてのもいます」

コトタ「いっぱい呂氏出てきた……」

なた「これからも登場しますからね。

   しない人もいますが」

コトタ「ふええ……」

なた「ちなみにこの年に長沙王の呉臣も亡くなってまして、

   息子の呉回が後を継いでおります」

コトタ「どんどん時代が進んでいってますねぇ」

なた「ええ、なんとさっき紀元前194年になったばかりですが、

   次回紀元前193年に入りますので」

コトタ「えっ」

なた「それでは次回もお楽しみにー!」

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