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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第101回

なた「前回、主人公の1人だった高祖こと劉邦が崩御しました。

   今回からの主人公は企画序盤から話していた通り、

   劉邦の正室にして恵帝の母、皇太后の呂雉が主人公となります」

コトタ「呂雉がどんな活躍をするのか楽しみです。

    ずる賢いところも見えますが、強い女性って感じですよね」

なた「その評価はどうかと思いますがね……」

コトタ「えっ」

なた「まあ気にせず本編へ行きましょう」

 

劉邦ちょびっとまとめ

コトタ「あれ?呂雉編スタートだったんじゃ?」

なた「本格スタートは次回からです!!!」

コトタ「もう……」

なた「劉邦崩御前のお話が大半になってくると思いますが」

コトタ「順序がおかしい気がしますけど、

    第100回に崩御を持っていく為に調整した内容ってことですね」

なた「いえ、単純に前回話すのを忘れてただけです……」

コトタ「そうですか……」

なた「まず劉邦が死ぬ直前に残した詔勅がありましてね。

   一般的には"白馬の盟"と呼ばれるものなのですが、

   白馬を生贄にしてこんな内容の宣言をしております」

 

劉邦「お前らいいか?

   もし劉氏以外の者が王になろうとしたら、

   天下を挙げてそいつを殺せ!!!

   このルールは俺の意思だ!漢王朝で守り続けろ!!」

 

コトタ「ああ、劉氏以外の王はダメってルールができたアレですね。

    後漢だと曹操が魏王になったのが物凄い出来事だって話を

    少し前にした記憶です」

なた「ですです。

   漢王朝発足時に諸侯王となったのは

   臧荼、韓王信、張敖、韓信、彭越、黥布、呉芮ですが、

   長沙王の呉臣(呉芮の息子)以外は粛清で死んだか格下げされました」

コトタ「代わりに諸侯王になったのは異姓ではなく皆劉邦の親族でしたね」

なた「ええ。

   劉邦の息子全員(恵帝除いて7人)と弟と甥が同姓諸侯王になってますね。

   劉肥が斉王、劉如意が趙王、劉恒が代王、劉恢が梁王、

   劉友が淮陽王、劉長が淮南王、劉建が燕王、

   劉交が楚王、そして劉濞が呉王に封じられ、

   この時点だと長沙王と合わせて10人の諸侯王がいたことになります」

コトタ「天下は劉氏に染まった、と」

なた「もしも異姓諸侯王がそのまま続いていれば、

   戦国時代の再来になっていただけでしょうし、

   劉邦の判断は間違ってはいなかったとは思います。

   ただそのやり方が呂雉の私欲と劉邦の猜疑心による粛清祭だったのが

   問題だったんだろうなって」

コトタ「ですねぇ……」

なた「さて、そんな劉邦の評価を史書から見てみましょう」

コトタ「三国志でも本紀や列伝には当人の評価を陳寿が書いてますものね」

なた「ですねー。

   "劉邦は勉強を全くしませんでしたが、大変聡明で、

    謀略が好みで、人の意見をしっかり聞く人でした。

    それに警備兵等の兵士に対しても古い友人の様に

    親しく付き合ったと言われています"と書いてまして

   これまでの企画で描いた劉邦の人となりそのままかと思います」

コトタ「偏屈で傲慢ですが度量の大きい人物だったのは間違いないですね」

なた「まあ度量が本当に大きいなら粛清祭は起こらなかったんでしょうけど……。

   王朝の存続なんてのは、ひとりの人間としての器では解決できないものですが」

コトタ「劉邦はどうするのが正解だったのか……」

なた「秦に倣って郡県制にしていれば……なんて考えたこともありますが、

   韓信や彭越らが納得するわけもないので、本当に何が正解なんだか」

コトタ「こればかりは難しいですねぇ……」

なた「というわけで劉邦のまとめは以上です。

   ここからは……」

コトタ「お?呂雉編は次回からでは?」

なた「劉邦の崩御前後に起きた出来事を少し話します。

   呂雉編の序章とも言える件でもあるので」

コトタ「ほほう」

 

ブルータス、お前もか

コトタ「それは150年ぐらい先の共和制ローマでしょう!?!?」

なた「よくご存知で。

   いずれ"教えて!古代ローマ"で語ることになるでしょう」

コトタ「何年後になることやら……」

なた「劉邦は暗殺されたわけではないので、こんな台詞は言ってはいないのですが、

   気分的にはこの台詞みたいなことを頭に思い浮かべたであろう一件がありましてね」

コトタ「劉邦にとってのブルータスみたいな人がいた?」

なた「まあ関係性は少し違いますが、裏切られると思ってなかった相手ですね」

コトタ「それこそ盧綰の匈奴内通がそれでは?」

なた「そっちもそうでしょうけど、もう1人います」

コトタ「んー……」

なた「樊噲です」

コトタ「えーーーーーーーーー!?」

なた「劉邦が病に伏せていた頃に樊噲は讒言されてましてね。

   "樊噲は皇后(呂雉)と仲が良いので、陛下が崩御された後に趙王(劉如意)

    の家族や一党を殺すつもりでいます!"と」

コトタ「劉邦はそれを信じたのです?」

なた「はい、信じちゃっています。

   実際、樊噲は呂雉の妹である呂嬃を娶ってましてね。

   余談ですが呂嬃は中国史上初めて女性で列侯された人物とも言われています」

コトタ「ほええ……凄い。

    つまり樊噲は完全に呂雉派だった?」

なた「まあそうでしょうね。

   劉邦の挙兵前からの関係もあったでしょうし」

コトタ「ふむ……」

なた「劉邦は"樊噲お前もかよ!"と激怒し、陳平に対策を相談します。

   陳平の計を採用し、周勃を呼び出します。

   "陳平と共に樊噲の元へ行き、お前が将軍となって引き継げ。

    そして樊噲を殺せ"と」

コトタ「ふええ……」

なた「ただ陳平と周勃は道中話し合います。

   "なぁ、陳平殿。陛下の言う通りにすべきだとは思うのだが、

    樊噲殿は陛下とも古い付き合いで、功績もかなり大きい。

    それだけでなく呂嬃殿を娶っていて、皇后とも繋がりがある。

    陛下はお怒りの状態だから、樊噲殿を殺せと言っているが、

    後悔してしまうに違いない。生け捕りにした上で陛下自身

    に裁いてもらうのが良いのではないか?"と」

コトタ「周勃は前回劉邦が話した評価通り劉氏を守ることができそうな人物

    ってのがよくわかる発言ですね」

なた「元々は機織りや葬儀屋で働いていた庶民だったんですけどねぇ。

   小役人に過ぎなかった蕭何や曹参、夏侯嬰なんてのもいますし、

   劉邦のスターターデッキが最強過ぎたんだなって思います」

コトタ「本当そう思います」

なた「さて陳平は周勃の提案に同意し、樊噲の陣営に到着すると

   "樊噲を殺す"旨の詔勅を伝えました。その上でさっきの事情を話し、

   樊噲も納得して自ら両手を後ろに縛って出頭しています」

コトタ「樊噲の内心どうだったんでしょうねぇ」

なた「特に記述はないでしょうが、盧綰同様劉邦を信じてたでしょうし、

   死ぬことはないと思ってはいたでしょうね。

   周勃は樊噲に代わって燕平定任務の将軍となっています」

コトタ「樊噲がこの時していたのは反乱を起こした盧綰の対処だったんですか?」

なた「ですです。

   なので本当に劉邦崩御直前のお話なんです。

   というか縛られた樊噲を連れて長安を戻っている途中に、

   陳平は劉邦崩御の急報を聞いてるぐらいなので」

コトタ「ああ、そんなタイミングで……。

    つまり劉邦は樊噲を恨んだ状態で死んでしまったってことですか……」

なた「そういうことになるんでしょうね……。

   陳平はすぐに自分の身を守ることを考えます」

コトタ「ん?何でです?」

なた「そりゃそうでしょう。

   樊噲を殺すのは自分が考えた計でもあるんですから、

   劉邦が生きていれば劉邦の責任ですが、その劉邦はもういないんです。

   呂嬃が姉(呂雉)に陳平のことを報告してしまったら、

   立場がかなり危うくなるのはわかりきってたのです」

コトタ「権力の闇だぁ……」

なた「朝廷から陳平には"灌嬰と共に滎陽で軍を指揮せよ"という命令が届いてましてね。

   滎陽にいては呂嬃が呂雉に接触するのを許してしまう為、

   長安に戻ってから呂雉に泣いて懇願したのでした。

   "自分を禁中の宿衛の任務につけてください!"と」

コトタ「ずっと宮殿のそばにいれば安全だってことですか」

なた「皇后の妹だとは言えおいそれと後宮には入り込めないですからね。

   陳平が管轄することになれば、尚更です。

   呂雉は真意も知りませんので、陳平の言葉を受け入れ、

   郎中令に任じ、併せて恵帝の教育係も任せたのでした」

コトタ「陳平は世渡り上手だなぁ」

なた「当代最高の謀略家ですからね。

   世渡りなんてお手の物だったのでしょう」

コトタ「さすがなたさんのお気に入り人物です」

なた「そこは関係ない気もしますがねww

   さて樊噲は長安に到着するともう罪なんてあって無い様なものなので、

   特に何も裁かれることなく釈放されて、全て元通りになっています」

コトタ「呂雉にとっても樊噲は頼れる義弟ですしね」

なた「ですです。

   というわけで劉邦崩御前後のお話はここでおしまいです。

   次回からは約束通り呂雉編の本格スタートです!!」

コトタ「本当かなぁ……。

    では次回をお楽しみに!!!」

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