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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第98回

なた「第100回にとある大イベントを合わせたいと思ってたんですが、

   どう分量を変えても無理でした……」

コトタ「ほほう?100回って言ってもまだ……ん?

    気付けばもう第98回なんですね!?」

なた「そうなんですよ!

   でも今の流れで行くと第100回は特に盛り上がる

   イベントもなさそうで……」

コトタ「そこはうまくやってくださいよ!!

    これまでの企画でも第100回は初めてなんですから」

なた「ですよね……。

   色々調整してみますが、無理ならごめんなさい……」

コトタ「さぁ本編行きますよ!!」

 

黥布が弱いのか、劉邦が強いのか

コトタ「ええ……」

なた「前に黥布の実力がよくわからないって話をしてましたが、

   それがよくわかる回です」

コトタ「実力がよくわかるってことです?」

なた「いえ、よくわからないということがよくわかるってことです」

コトタ「……?」

なた「黥布は反秦の戦いの際でも常に項羽軍の先鋒を務め、

   多数の活躍をしているのは間違いないので、決して実力が低いわけではないんですがね」

コトタ「それでも韓信と彭越と比べると微妙っていう感じでしたね」

なた「そうですね。とりあえず本題へ行きましょう。

   えーっと黥布は挙兵に際して側近の将軍にこんな話をしていました。

   "劉邦はもう年老いているから自ら出張るなんてことはないだろう。

    どうせ諸将の誰かを総大将にしてくるはずだ。

    諸将の中で怖いのは韓信と彭越だけだったが、彼らももういない。

    つまり俺は恐れる必要がないってことだ"と」

コトタ「劉邦が自ら征伐に向かってるって情報が届く前ってことですね」

なた「ですね。

   その後、黥布は薛公の予想通り東の呉を攻め、

   荊王の劉賈(劉邦の従兄)を殺しています」

コトタ「あらら……。

    この企画だと楚漢戦争末期から登場して、

    劉邦とは別の一軍を任せられる活躍してましたよね」

なた「ええ。

   劉賈の兵を吸収した黥布は次に楚地を攻撃しました」

コトタ「楚王は劉邦の弟の劉交でしたっけ?」

なた「その通り。

   劉交は黥布の隙を突く為に兵を3つに分けて

   対抗しようとしましたが、側近が諫言しております」

コトタ「戦略的に間違ってるんです?」

なた「状況によるんでしょうけどね。

   孫子の九地篇を引用した諫言だったんです。

   "諸侯は自分の領土で戦ったら、兵は士気が下がって離散してしまう"

   というものでして」

コトタ「あー、家が近いからみんな逃げちゃうってことですね」

なた「ですです。

   しかし劉交は諫言を無視し、案の定敗走しちゃってます」

コトタ「ここまで見る限りはそれなりに強い……のかな……?」

なた「相手が弱いと言うべきかも微妙なとこですしねぇ。

   劉交はまだしも、歴戦の劉賈を破ってるわけですし」

コトタ「曹参、周勃、灌嬰、酈商辺りに勝ってるとかなら

    "やっぱ黥布強い!"って言えるんですけどね……」

なた「さて劉邦は諸侯の軍と合流するだけでなく、

   死刑以外の囚人全ての罪を許して、全員を従軍させたのでした」

コトタ「総力挙げて黥布を叩き潰す勢いだった、と」

なた「じゃないと黥布には勝てないって考えたとすれば、

   劉邦がそれだけ黥布を警戒してるってわけですから、

   やっぱり黥布は強いのかな?と思ったりもするんです」

コトタ「確かに」

なた「年が明けて紀元前195年。

   劉邦軍と黥布軍が対峙し、睨み合いが始まります。

   劉邦は黥布軍の陣容を見てデジャブを感じました」

コトタ「ほう?

    どういうデジャブです?」

なた「項羽の陣の敷き方にそっくりだったんですよ。

   それを見て劉邦は嫌悪感を抱いたとか」

コトタ「ああ……、それは確かに嫌悪しますね……。

    何度も辛酸を舐めさせられたでしょうし……」

なた「で、ここで会話シーン挟みます」

 

劉邦「黥布、お前は何で裏切ったんだ!!!」

黥布「うるせえ!

   俺は皇帝になりたいだけだよ!!!」

劉邦「うわー!お前マジでクズだな!

   ばーかばーか!!!」

 

コトタ「ん……?それだけ……?」

なた「はい。

   この会話をきっかけに開戦しています。

   が、特に戦闘描写もなく黥布は敗走しちゃってます」

コトタ「えっ」

なた「一応この時劉邦が矢傷を負ってるみたいなので、

   相当な激戦なのが想像できますけどね。

   一旦撤退してから盛り返すと思いきや、

   何度か戦っても黥布は全敗しちゃってるんです。

   結果100人ちょっとの手勢だけを率いて江南まで逃げています」

コトタ「黥布が弱いのか、劉邦が強いのか……」

なた「そういうことです……。

   "劉邦は老齢だから来ない。代わりに諸将が来ても

    韓信や彭越じゃないなら大丈夫"

   と言った内容を黥布が冒頭に言っていましたが、

   そこを考えると"劉邦が強い"が正解だとは思うんですがね」

コトタ「対項羽だとぼろ負けでしたが、他は結構勝ってますし、

    経験値は項羽や韓信、彭越が亡き今トップクラスでしょうしね。

    そんな劉邦だからこそ黥布に勝てたかもですし、

    黥布は弱くないってなるんですかねー」

なた「ただ劉邦は追撃を別将に任せちゃってるんです。

   "自分じゃなくても勝てるな"と判断してしまってるのかなって……」

コトタ「ええ……。

    で、でも劉邦以外の将軍なら黥布は勝っちゃうって展開も!?」

なた「じゃあ続きを教えましょう。

   名前が残されていない別将は洮水という川の南北で黥布と戦い、

   どちらも大勝しています」

コトタ「……」

なた「ここで思い出して欲しいのが黥布の妻が誰の娘だったかです」

コトタ「ん……?」

なた「黥布が登場したばかりの頃に話したと思うのですが、

   呉芮の娘を娶っていたでしょう?」

コトタ「あーーー!!」

なた「つまり現在の長沙王の呉臣の姉or妹が黥布の妻ということです。

   というわけで義兄弟である呉臣は黥布に

   "共に南越へ逃げよう"と使者を送って誘っています」

コトタ「まさかそっちも謀反しちゃうーーー!?」

なた「黥布は誘いに乗って番陽までのこのこやってきたのですが、

   そこで誰かわからない人に殺されちゃってます。

   要するに呉臣の策略だったわけです」

コトタ「あっさり死んじゃった……。

    それにしても身内に裏切られるのはちょっと辛いですね……」

なた「漢王朝への忠義を評価すべきなのか、

   身内を裏切った不義を批判すべきなのか」

コトタ「物事は何でも表裏一体ですね……」

なた「ですねぇ……。

   話を戻しまして、黥布が死んだ後か前かわかりませんが、

   劉邦は長安に帰還する前に故郷である沛に寄っていましてね」

コトタ「かなり久しぶりの帰郷なのでは?」

なた「でしょうね。

   沛の旧友や父老、子弟を集めて大宴会を開いておりまして、

   昔話を酒と共に楽しんだそうです。

   この時地元の子供達120人が集まって歌を歌っているのですが、

   劉邦も酒が回って気分を良くしたのか自分も歌い始めました」

コトタ「ご機嫌ですねぇ」

なた「その時劉邦が歌った詩は"大風の歌"と呼ばれてまして、

   ちゃんと残っています」

 

  大風起兮雲飛揚、
  威加海内兮帰故郷、
  安得猛士兮守四方。
コトタ「どういう意味です?」
なた「例の如く雑な意訳をしますと、
   "大風が巻き起こって、空には雲が湧いた!
    俺の威光は天下全てに広がって、今故郷に帰ってきたぞ!
    どうにか勇者を集めて、この国を守ってもらいたいもんだな!"
   って感じです」
コトタ「なるほど。
    力強い歌に見えますが最後が物悲しい感じもしますね?」
なた「連続で韓信、彭越、黥布と勇者に(劉邦視点では)裏切られてますからね。
   この歌を子供達に覚えさせたそうなので、
   "お前達が漢を守ってくれよな"って意味もありそうです」
コトタ「ふむふむ」
なた「宴が終わると劉邦は沛の民に宣言しました。
   "都は遠い関中にあるが、俺が死んだら魂は喜んで沛に戻るだろう。
    そもそも俺は沛公として兵を挙げて秦、そして項羽を滅ぼした。
    これより沛は俺の私邑とする!沛の民は子々孫々に到るまで
    租税も強制労働も無しとする!"と」
コトタ「とんでもない太っ腹発言ですね!?」
なた「本当に太っ腹ですよね。
   その後も10日以上劉邦は沛に留まって日夜宴会を繰り返したそうです。
   で、帰還する日になっても沛の住民は劉邦を押し留めようとします。
   劉邦は"俺の従者はかなりの数だからな。迷惑かけちまうし帰るわ!"
   と惜しまれつつも長安への帰路に出発したのでした」
コトタ「やっぱ地元だし、かなり愛されてますね」
なた「かっこよく劉邦は出発したのですが、
   沛の住民は全員がどこまでも見送りでついてきたんです。
   というわけで、劉邦はさらに3日間追加で沛の西側に駐屯して
   また宴会をしちゃっています」
コトタ「休肝日は大事ですよ……」
なた「その宴会で沛の住民は劉邦に平伏して言いました。
   "沛は陛下のお陰で一生の租税や強制労働を免じて頂きました。
    しかし豊の待遇はそのままです。何卒陛下の恩寵をお与えください"と」
コトタ「ん?
    豊は沛県の一部では?」
なた「それ疑問に思ってググったんですが、
   この頃は泗水郡沛県豊邑ではなく、沛郡豊県になってましてね。
   沛県と同格として豊県があったそうです」
コトタ「ああ、そういうことでしたか」
なた「劉邦は住民達の願いにこう答えます。
   "いやぁ、豊は確かに俺の生まれ故郷だし忘れてねーよ。
    でも昔豊の住民共は雍歯と一緒に俺を裏切ったんだよなぁ"と」
コトタ「そんなこともありましたね……」
なた「ただ沛の住民が強く懇願したので、結局は豊も沛と同じ待遇になったのでした」
コトタ「劉邦はツンデレでしたか」
なた「何か違うと思いますが……。
   それと劉太公の為に作った新豊の住民や関中入りに付き従った者も
   沛県や豊県と同じように一生の租税と強制労働を免除したそうです」
コトタ「劉邦を信じて従った人達が報われたってわけですねぇ」
なた「ですね。
   さて今回はここまでとしましょう」
コトタ「はーい!
    それでは次回をお楽しみにー!!」
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