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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第95回

なた「かつて関東三将とされた韓信と彭越が死にました」

コトタ「粛清された、が正しいですけどもね……」

なた「残りは淮南王の黥布なんですが、彼は一体どうなるのか」

コトタ「もうどうなるかわかりますけどね……」

なた「何故です?」

コトタ「三国志平話で韓信、彭越、黥布が三国志の英雄3人に転生するって言ってたじゃないですか。

    それに劉邦と呂雉も登場するって」

なた「ええ」

コトタ「劉邦と呂雉は3人にとって復讐相手として登場させられたんじゃって思いまして。

    つまり黥布も粛清される」

なた「大正解!

   その話は韓信初登場の第41回ですね。

   その時は話してませんが、劉邦と呂雉は献帝と伏皇后に転生させられています。

   曹操に転生した韓信が彼らに復讐したわけです。

   まあ曹操は献帝を害してはいないのですが」

コトタ「それに"劉姓以外は諸侯王にするな"ってルールができるのであれば、

    親族同然の盧綰はさて置き、黥布は一番に粛清対象になりそうですし……」

なた「なるほど。

   では黥布はどうなってしまうのか!

   本編へGO!!!」

 

異姓諸侯王プラスマイナス0・その1

コトタ「これまでで一番意味がわからないサブタイトル……」

なた「個人的に気に入ってますがね?」

コトタ「黥布が異姓諸侯王のマイナスだとして、プラスがよくわかりませんね」

なた「でしょうね。

   今回はまずプラスについて話していきます」

コトタ「じゃあマイナスの黥布は次回ってことじゃないですかーーー!」

なた「そういうことです!!!

   さて三国時代の呉を一番苦しめていたのはどこでしょう?」

コトタ「急に三国志ですか!?

    やっぱり魏ですかね?」

なた「魏も正解ではあるんですが、なんだかんだで

   呉は山越(異民族)に苦しめられていました。

   外征をしようにも兵力を全て割くことが難しかったわけです」

コトタ「あー……」

なた「では本編に戻りますが、

   もちろん項羽と劉邦の時代にも越の民はいました」

コトタ「統治できてたのです?」

なた「秦が天下統一を果たした時、任囂と趙佗という2人の将軍が派遣されて、

   南越の地も平定されていましてね。

   現在で言うとベトナムのすぐそばの地域なんですが」

コトタ「ほほう」

なた「南海等3つの郡が設置され、任囂は南海郡の郡尉、

   趙佗は龍川県の県令になっています」

コトタ「三国時代まで越族がいたことを考えると駆逐されてませんし、

    中国人と越人が共存してたってことですかね」

なた「ですね。

   陳勝の乱の頃に任囂は趙佗に南越地域の後事を任せて亡くなったのですが、

   趙佗はすぐに南越各地の道を封鎖させ、現地にいる秦の上級役人らを殺し、

   3郡を平定してから南越武王を自称しているんです」

コトタ「話が急すぎる!?」

なた「任囂の遺言みたいなものでしてね。

   "秦は民衆を苦しめてるし、陳勝の乱もどうなるかわかったもんじゃねえ。

    そんなことより南越地域が侵略されるのが怖い。

    俺は兵を挙げて、情勢を見守ろうと思っていたが、

    病気が治らず、恐らく死期も近い。だから趙佗よ。

    お前が俺の遺志を継げ。この南越をひとつの国としてまとめあげるんだ"

   って感じのことを言ってるんです」

コトタ「そんな経緯が……」

なた「実際領地もそれなりに広いですし、中国人も越族も多く暮らしてましたので、

   ひとつの国を作るってのもあながち間違ってないんですがね。

   で、時は流れて紀元前196年になりました」

コトタ「それまでずっと趙佗の治世が続いていたんです?」

なた「ええ。

   どこぞの統一王朝より平和だったと思われます」

コトタ「秦と漢……」

なた「項羽との戦いで疲弊し切ってたので、

   劉邦もあえて南越を攻めなかったって事情もあるんですがね」

コトタ「地理的にかなり遠いですし、遠征もきついでしょうしね……」

なた「ですねぇ。

   というわけで劉邦は

   "南海尉の趙佗のお陰で南越地域は平和が続いている。

    越族は野蛮なはずなのに、俺ら中国人が害されていないのも

    全部趙佗のお陰なんだよな。だから趙佗を南越王に封じようと思う"

   と詔勅を出しています」

コトタ「漢王朝的には趙佗は南越武王ではなく、南海の郡尉だった?」

なた「任囂は亡くなる際に趙佗を行(代理)南海尉に任じてるので、

   そのまま当時の朝廷に報告され、正式な位となっていたのでしょう。

   それもあってか趙佗は尉佗とも呼ばれていたのです」

コトタ「なるほど」

なた「そして南越への使者として送られたのが、久々の登場となる儒者の陸賈です」

コトタ「誰でしたっけ……?」

なた「この企画だと、項羽に対して劉太公と呂雉の返還を求めた際

   の使者としてしか登場してないですね。

   惜しまれて釜茹でされた酈食其と同様に劉邦の為に各地を走り回っていた人です」

コトタ「ああー、思い出しました」

なた「その陸賈は南越王の印綬を持って、南越地域まで出向き、趙佗に謁見しました。

   趙佗はだらしない格好と座り方で陸賈を遇します。

   その時の会話を見てみましょう」

 

趙佗「遠路遥々よく来たなぁ」

陸賈「むっ……(態度が悪いですねぇ……?)。

   南海尉よ、私は漢王朝の皇帝陛下の使者です。

   つまり私の言葉は陛下の言葉なのですぞ。

   態度を改めるべきでしょう」

趙佗「俺は南越武王だぞ?

   そっちこそ態度を改めろよ」

陸賈「はぁ……。

   あなたは越人ではなく中国人ですよね?

   父母や親族の墓だって中国にあるでしょう?

   それなのに父母を裏切り、越人と同じ格好をして、

   さらに陛下と敵対までしようとするのですか?」

趙佗「そんなもん関係あるか!」

陸賈「陛下は巴蜀なんて辺境から兵を挙げて、

   たった5年で覇王を号した項羽を倒したんですよ?

   そんな最強の陛下はあなたが秦はもちろん項羽との戦いに

   協力しなかったことを知っています。

   なので諸侯や将軍は今すぐにでも南越へ兵を送ってあなたを殺そうと話しました。

   しかし陛下はお優しいので、項羽との大戦で疲弊している

   民衆を休ませたいと考えたのです」

趙佗「だ、だから何だ!!」

陸賈「だから陛下は私を使者とし、南越王の印綬をあなたに送ろうとしたわけです。

   本来ならあなたは私を城の外まで出迎えて、臣下を称するべきでした。

   それどころかあなたは自分を王だと言い張り、服従しようとしません。

   もし陛下がこの話を聞いたらどうするでしょう?」

趙佗「ど、ど、どうするのだ……!?」

陸賈「あなたの父母や親族の墓を掘り起こして焼き尽くし、生きてる親族は皆殺ししますね。

   それに将軍に10万の兵を率いさせて南越に進軍するでしょう。

   そうなれば越人があなたを殺して、我ら漢王朝に帰順して戦争は終わりでしょうかねぇ?」

趙佗「ひっ……!

   す、すまない。大変申し訳なく思っておる……おります。

   辺境の土地に長居していた所為か、中国の礼儀を忘れてしまってまして……」

陸賈「まあよろしいでしょう。これは陛下からの印綬です。

   正式に漢王朝の諸侯として南越王に封じる旨の詔勅が出ています」

趙佗「ははっ、ありがたき幸せーーー!

   これから俺……いや私は南越王として漢の臣下となります!」

陸賈「では使者としての役目はこれで終わりなので、

   私個人に対しては普通に話して結構ですよ」

趙佗「そ、そうか(こいつ怖ぇ……)。

   では陸賈先生と言ったな?蕭何や韓信と比べて俺はどんなもんだ?」

陸賈「多分王様が上でしょうね」

趙佗「おお、それは嬉しいな!

   では陛下と俺を比べたらどんなもんだ?」

陸賈「陛下は天と地が分かれて以来、一番の偉業を達成した人です。

   漢王朝は億の民と万里の地と潤沢な資源を有しております。

   王様はせめて十数万の民と山に囲まれた狭い土地だけでしょう。

   漢王朝の一部でしかないのに、どうして比べられると思ったのです?」

趙佗「ははは。

   俺は中原にいなかったから、ここで王になっているだけだ。

   俺が中原にいたら漢王朝に負けるわけがなかろう?」

陸賈「ははは(また脅した方がいいんですかねぇ……?)」

 

コトタ「夜郎自大……?」

なた「似た様なエピソードですが場所が違いますね。

   もう少し後のお話ですし、南越とも若干関わりがあるエピソードではありますが」

コトタ「ふむふむ」

なた「さて陸賈は数ヶ月程度南越に滞在しましたが、

   趙佗に大変気に入られて金銀財宝を与えられております。

   改めて趙佗は漢王朝への臣従を誓い、陸賈は長安へと帰ったのでした」

コトタ「ミッションコンプリートですね!」

なた「ええ。

   劉邦は陸賈の報告に大変喜び、陸賈を昇進させていますね。

   ちなみに今でも広東省に龍川県という地域はあるのですが、

   趙佗が県令だったこともあって、龍川城は佗城と呼ばれているそうです」

コトタ「通称ですか?」

なた「いえ、普通に佗城村や佗城鎮という地名もありますし、

   田横島と同じで正式名称になってますね」

コトタ「ほええ、凄い」

なた「この流れでついでに陸賈の話もしておきましょう。

   陸賈は儒者ということもあって、劉邦にとっては少し煙たい存在でした」

コトタ「劉邦は儒者嫌いですしね……」

なた「儒教の経典でもトップ5と言われる五経ってのがあるのですが、

   その内の詩経と書経が陸賈は大好きだったのです。

   なので事あるごとに劉邦に詩経と書経を引用して色々話していたそうです」

コトタ「あー、劉邦に怒られそう」

なた「ええ、怒られています。

   "お前はいっつも詩経だの書経だの言ってるがな、

    俺は馬の上にいて兵を率いて天下を取ったんだぞ?

    その経典があったところで天下は取れてなかっただろう?"と」

コトタ「確かに。

    魏無知が陳平を推挙した理由と少し似てますね」

なた「それに対して陸賈はこう答えました。

   "馬の上で天下を取りましたが、馬の上で天下を治められますか?

    古の湯王や武王ら聖王達も武で天下を取りましたが、文で天下を治めました。

    一度は覇者となった呉王の夫差や天下を統一した秦始皇はどうでしょう?

    彼らは武にこだわり続けた為にどちらも滅びたでしょう?

    もし秦始皇が聖王に倣って文を尊んでいたら、陛下は天下を取れたでしょうか?"と」

コトタ「儒者と口喧嘩するのは怖いですね……」

なた「劉邦は大いに恥じ入り、

   "そうだな……。お前の言う通りだ。

    では陸賈よ。秦が何故滅び、俺が何故天下を取れたのか、

    そして過去の覇者や王者の興亡について、俺の為にまとめて書いてくれ"

   とお願いしております」

コトタ「あら、素直」

なた「陸賈は大喜びしたでしょうね。

   自分が愛してやまない儒教に則った物を皇帝の命令で書けって言われたんですから」

コトタ「しかも儒者嫌いの皇帝が命じてるんですものね!」

なた「ええ。

   陸賈の書いた文章は全部で12篇となり、"新語"と題される書物となっています。

   陸賈はまた後日活躍することになりますので、覚えといてくださいね」

コトタ「はーい」

なた「減り続けていたはずの異姓諸侯王でしたが、

   趙佗が正式に南越王になったことで1人プラスされました」

コトタ「そして次回マイナスされる?」

なた「そうですね。

   どういう経緯でマイナスされるのか、次回をお楽しみに!!」

コトタ「また次回ー!」

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