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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第94回

なた「もう"誰かが死にます"って次回予告はやめておこうかな、

   と改めて思いました」

コトタ「何を今更……」

なた「歴史というより物語としてこの企画を読んでる方もいるみたいで、

   セルフネタバレになってないかって考えたのです」

コトタ「あー、確かに」

なた「歴史にネタバレもクソもないと言われればそれまでなんですがね」

コトタ「それもまた確かに……」

なた「では本編行っちゃいましょー」

 

さよなら、熱血おじいちゃん

コトタ「言ったそばからサブタイトルでネタバレじゃないですかー!」

なた「サブタイトルは避けられないでしょう!?」

コトタ「それはそうですけどーーー」

なた「というわけで今回の主役は熱血おじいちゃんこと梁王の彭越」

コトタ「項羽の後方を何度も攻めては逃げるを繰り返した戦上手ですよね」

なた「ええ。

   対項羽という観点で言えば韓信以上の功績があったと言っても

   差し支えない将軍だったでしょう」

コトタ「物凄い高評価だ」

なた「さて彭越のお話をする前に劉姓の諸侯王について

   まとめておきたいと思います」

コトタ「異姓の諸侯王は前回の最後に私が挙げた3人ですよね?」

なた「燕王の盧綰が抜けてましたけどね」

コトタ「盧綰はもう劉邦の親族みたいなものですし……(言い訳)」

なた「気持ちはわかります。

   まとめる理由は同じ回で紹介していなかったので、

   そろそろ忘れてる頃じゃないかなってだけなので他意はありません」

コトタ「本当に?」

なた「ええ、本当に。

   以下が紀元前196年時点の劉姓諸侯王です。

   楚王の劉交(劉邦の弟)、荊王の劉賈(劉邦の従兄)、斉王の劉肥(劉邦の息子)、

   趙王の劉如意(劉邦の息子)、代王の劉恒(劉邦の息子)」

コトタ「見事に元々異姓諸侯王だった地を劉姓が固めていますね」

なた「後々"劉姓以外は諸侯王にすんな!"ってルールも出来るのですが(後漢まで続いた)、

   もうこの頃からその勢いだったわけです」

コトタ「それを聞くと曹操が魏王に封じられたのが凄まじいことだってのがよくわかりますね」

なた「でしょう?

   400年近く続いた伝統を打ち破るだけの功績が曹操にはあったので、

   当然と言えば当然ですがね」

コトタ「ですね!」

なた「で、彭越の話に戻りましょう。

   彭越も実は陳豨征伐の要請に対して、韓信同様に仮病かどうかは不明ですが、

   病気だということで参加してなくてですね。

   一応将に兵を与えて戦地には向かわせてるんですが」

コトタ「それなら別にいいのでは?

    本当に病なら戦うこともままならないでしょうし……」

なた「私もそう思うんですが、劉邦はブチギレて彭越に譴責の使者を送ってるんです。

   彭越は他の粛清被害者の二の舞になりたくなかったのもあって、

   謝罪する為に劉邦に会いに行こうとしてるんですが、

   それを扈輒という梁の将軍が引き止めています」

コトタ「読めない……」

なた「コチョウですね。

   実は戦国時代末期の趙の将軍に同姓同名がいるんですが、それとは全く別人です。

   そっちの扈輒は桓齮に殺されてますので」

コトタ「ふむふむ」

なた「扈輒は彭越に言いました。

   "使者が来る前に謝罪に行ってれば良かったんですがねー。

    王様(彭越)は使者が来て初めて謝罪に行こうとしてるでしょう?

    それじゃあダメですよ。他の諸侯王がどうなったか知ってるでしょう?

    捕らえられるだけならまだしも、最悪殺されちゃう可能性だってあります。

    それならいっその事反乱起こしません?"と」

コトタ「劉邦に吠える犬はここにもいましたか……」

なた「ということでしょうね。

   しかし彭越は扈輒の提案を却下してるんですが……。

   ここで韓信と同じ事件が起きています」

コトタ「同じ事件ってまさか!?」

なた「梁の大臣の1人が罪を犯したんですが、罰を恐れて逃げてるんです。

   そして劉邦に直接ではないでしょうけど"彭越が扈輒と謀反の相談をしてる!"

   と報告したのでした」

コトタ「いやいや彭越は却下しましたよ!!!」

なた「劉邦はそれを信じて彭越を逮捕。

   法律官が裁判を行った結果、有罪判決となります」

コトタ「何で……?」

なた「確かに彭越は扈輒による謀反の提案を却下しました。

   しかし扈輒を殺さなかったわけです」

コトタ「それを謀反とした……?」

なた「"過ちて改めざる、是を過ちと謂ふ"と論語にもありますが、

   そういうことなんでしょう」

コトタ「何か本来の意味と違う様な気がしますがニュアンスはわかりました……。

    彭越はどうなったんです?

    死ぬのはわかってるのでこの質問もおかしいですが……」

なた「あ、ここでは死んでません。

   劉邦は罪を許したわけではないですが、彭越を死刑にはしてないんですよ」

コトタ「侯に格下げ?」

なた「いえ、張敖の様に完全無罪ってわけではないので、

   王位も官職も剥奪されて庶民に落とされ、巴蜀の地に送られています」

コトタ「あらら……」

なた「判決は洛陽で行われたみたいでしてね。

   彭越が巴蜀へ向かっていたところ、呂雉が丁度長安から洛陽へ向かってましてね」

コトタ「つまり洛陽と長安の間で鉢合わせる?」

なた「ですです。

   彭越は呂雉に出会うと、泣きながら自分の無罪を訴えました。

   庶民になるのはいいけど、せめて出身地の昌邑で暮らしたいと言うのです」

コトタ「老齢であれば尚更故郷が恋しいでしょうしね……」

なた「呂雉は彭越の訴えを認め、彼を連れて洛陽へ向かいます。

   そして劉邦にこう言いました。

   "彭越はジジイとは言え有能で強いです。

    巴蜀へ送っても変事が起きる可能性があります。

    それなら殺してしまう方が漢王朝の為になるでしょう。

    なので連れ帰ってきました"と」

コトタ「えーーーーーーーーーー!?」

なた「さらに呂雉は彭越の雑用係に"彭越がまた謀反を起こそうとしてる"

   と嘘を書かせて、それを上奏した為、劉邦は彭越に対して死罪を言い渡したのでした」

コトタ「ひどすぎるよぉ……」

なた「彭越は処刑され、韓信と同じ様に親族も皆殺しになっています。

   しかも彭越の遺体は市場に晒され、"遺体を回収した者は逮捕する"

   と詔勅も出されたのです」

コトタ「遺体を回収……?

    それは何の意味があるんです……?」

なた「彭越を慕ってる人が"ちゃんと埋葬してあげたい"と考えるでしょう。

   つまりその人は謀反人の味方ってことになるので逮捕するってわけです」

コトタ「(慕ってる人の気持ちは)わかるけど、(その理屈は)わかりたくない……」

なた「ですね……。

   ただ実は史記では彭越の最期は全然違う内容になってるんです」

コトタ「えっ」

なた「ここまで書いたのは漢書の内容でして、史記の場合は

   "彭越が謀反を起こしたから廃位された。

    蜀に送られた彭越がまた謀反を起こしたので親族共々処刑された"

   って書き方なんです」

コトタ「内容は似てるようで全然違いますね」

なた「いずれにせよ彭越は粛清されたのは事実なんでしょうね……。

   で、ここで続けて後日談もしていきます。

   まさに前回の焼き増しみたいな流れになるんですが」

コトタ「ほほう」

なた「梁の欒布という人が斉に使者として出向いていたのですが、

   戻ってみたら梁王の彭越は庶民に落とされてるだけじゃなく死んでました。

   欒布は彭越の遺体の前で使者としての報告をし、

   その場で葬儀を行ってから哭礼しました」

コトタ「おお、忠義に厚い人だ……」

なた「それを見ていた人が役人に密告し、欒布は逮捕されます。

   劉邦は報告を受けて欒布を呼び出すと罵倒し尽くしてから釜茹でにしようとします」

コトタ「またですか……」

なた「というわけでまた会話シーンをどうぞ」

 

欒布「釜茹でにするのはいいですが、一言言わせてください」

劉邦「何だ?言ってみろ!!」

欒布「陛下がかつて彭城で項羽に敗れ、滎陽で苦戦していた頃、

   項羽が陛下を倒せなかったのは我が王(彭越)が梁地で

   項羽の後方を攻めていたからでしょう?」

劉邦「だからどうした!!」

欒布「あの時もしも我が王が項羽の味方をしていたらどうなってましたか?

   今漢王朝は存在していなかったでしょう。

   我が王が陛下に協力したからこそ、垓下で項羽を倒すことができたのです」

劉邦「ぐぬぬ……」

欒布「陛下はたった1度、我が王が病で兵を出さなかっただけで、

   謀反を疑って、証拠も何もないのに処刑されましたよね。

   このままだと他の諸侯や臣下が"次は自分が危ないのでは?"と

   危機を感じていることでしょう」

劉邦「……」

欒布「我が王は死んでしまいました。

   私はこのまま生きるより死んだ方がマシだと思います。

   さあ、釜茹ででも何でもしてください」

劉邦「もう良い。

   処刑は無しだ。お前は忠臣だな。

   都尉に任ずる、下がれ」

 

なた「欒布は許されて都尉になっています」

コトタ「本当に前回の焼き増し感が凄い」

なた「また前回と同じ様なことが続くのですが、

   劉邦は"梁王と淮陽王を新しく選べ"と諸侯や臣下に言っています」

コトタ「前回は代王に劉恒が推薦されましたね……」

なた「今回も蕭何らが劉邦の息子を推薦し、

   劉恢が梁王、劉友が淮陽王に封じられています」

コトタ「さらに劉姓諸侯王が増えた、と」

なた「ですね。

   では今回はここまでとします」

コトタ「はーい!

    次回また会いましょうー!」

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