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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第88回

なた「前回紀元前199年に入ったばかりですが、

   今回途中で紀元前198年に入ります」

コトタ「あら、紀元前199年はあまりイベントがなかったのでしょうか?」

なた「いえ、紀元前201年〜紀元前198年の出来事が

   史書によって順番や時期が前後していてですね。

   それが原因なんです」

コトタ「なるほど」

なた「では本編行きましょう!」

 

統一王朝でしょうか?いいえ、従属。

コトタ「こだまでしょうか……?」

なた「いいえ、誰でも。

   金子みすゞ先生は置いといて本編を始めます」

コトタ「自分でネタ振っておいて……」

なた「えーと実はこの企画で話していない時でも

   匈奴は定期的に漢を攻めていたんです」

コトタ「まあそうでしょうね」

なた「その為、劉邦は劉敬に相談しています」

コトタ「最近活躍が多いですねぇ」

なた「ですね。

   それではその時の会話を見てみましょう」

コトタ「はーい」

 

劉邦「うーん……。

   匈奴が頻繁に攻めてきて困ったなぁ」

劉敬「天下統一からまだ間も無く、将兵は先の戦争で疲れていますからね。

   匈奴を力で攻めても勝つことは難しいでしょう」

劉邦「弁舌ではどうだ?」

劉敬「冒頓は自分の父親を殺して力で威を奮っています。

   舌先でいくら説いても通じませんよ」

劉邦「じゃあどうしろって言うのだ!?」

劉敬「時間がかかる計略ではございますが、

   冒頓の子孫を陛下の臣にすることが可能です」

劉邦「ほう?」

劉敬「陛下の一番上のお嬢様を冒頓に嫁がせるのですよ。

   お子様が生まれれば、きっと太子に選ばれるでしょう」

劉邦「そんなうまく行くか?」

劉敬「匈奴が必要としている物をたくさん贈ればいいでしょう。

   そして弁士も共に送り、漢土の礼をさりげなく教えるのです。

   冒頓は娘婿として陛下を慕うことになりますし、

   冒頓の次は陛下の孫が匈奴を率いるのですから、何も懸念はなくなります。

   孫が祖父に逆らうなんてことは後にも先にも聞いたことがないでしょう?」

劉邦「それもそうだな」

劉敬「この方法ならば戦わずにゆっくりと匈奴を漢に臣従させることができます。

   いかがでしょうか?」

劉邦「よし、お前の言う通りにしよう」

 

なた「というわけで劉邦は長女を嫁がせようとしたのですが」

コトタ「劉邦の長女って魯元公主では?」

なた「ですです。

   他にも娘がいた可能性は捨てきれませんが、

   皇后の呂雉が産んだという意味では長女は魯元公主ですね。

   まあ結局、魯元公主が匈奴に行くって話は取り止めになってるのですが」

コトタ「彼女は既に趙王の張敖に嫁いでいますしね」

なた「その通りではありますが、それは理由としては弱くてですね」

コトタ「いやいや、既婚ってのは一番強い理由では……」

なた「臣下に嫁いでるだけですし、"父親の為に別のとこに嫁げ!"って

   言われれば断れないのが当時の中華の考えですから」

コトタ「そう言えばそうでしたね……。

    それなら取り止めになったのは何故です?」

なた「呂雉が嫌がったからです。

   毎晩泣きながら劉邦にこう言いました。

   "私の子供は2人しかいないのに、匈奴なんかに渡せません!"と」

コトタ「ええ……」

なた「劉邦もさすがに皇后の意見を無下にできず、

   計画を取り止めたってわけです」

コトタ「では匈奴対策はどうしたのですか?」

なた「翌年、つまり紀元前198年になってから、

   皇族の別の娘を劉邦の娘ってことにして嫁がせています。

   これにより漢と匈奴の和議が結ばれたわけです」

コトタ「おー!」

なた「しかし漢はこれ以後定期的に匈奴に朝貢するようになってまして、

   事実上匈奴に従属しちゃってるんですよ」

コトタ「えー!?

    サブタイトルはそういうことでしたか……」

なた「そういうことでした。

   ちなみに匈奴へ使者として出向いたのが劉敬なんですが、

   帰ってきてからこんな進言をしています」

コトタ「ほう?」

 

劉敬「匈奴の南の地からは早い馬を使えば関中まで1日で到着してしまいます。

   そんな関中は戦争が終わってから人口が減っており、

   素晴らしい土地なのに勿体ない状況です。

   そもそも諸侯が隆盛を極めたのも名族や豪傑と呼ばれる人達がいたからです。

   そんな人達は関中にはほとんどおらず、東の地には多くおります。

   今の状況で万が一匈奴が攻めてきたら対処することもできません。

   ですから東の地、つまり旧六国の名族や豪傑を関中に移住させましょう。

   平時は匈奴対策になりますし、もし東の地で何か起きても彼らを率いればいいのです」

 

コトタ「強本弱末でしょうか」

なた「よくご存知で。

   劉邦は劉敬の進言を容れ、十数万人が関中に移住させられています。

   ちゃんと広い農地と邸宅も与えてますがね」

コトタ「十数万って規模が凄いですね……」

なた「この時代で人口が5000万を超えていたと推測されてますからね」

コトタ「ほええ……」

なた「まあ三国時代には1000万人に満たなくなってるんですが……」

コトタ「えーーーーー!?」

なた「そこはまた三国志を語るときにでも話しましょう。

   というわけで匈奴対策は政略結婚と強制移住によって、

   完璧になったのでした」

コトタ「よく考えたらどちらも劉敬の進言によるものですね」

なた「彼は漢王朝初期の最大の功労者とも言える存在ですからね。

   と言っても今後は全く登場しないんですが」

コトタ「えっ」

なた「劉敬が(記録上)したことは長安遷都の提案から始まり、

   この強制移住の件で終わってるんですよ」

コトタ「なるほど……」

なた「史記では叔孫通と一緒に列伝をまとめられていてですね。

   そこから見ても漢王朝初期の基礎を築き上げた人物という

   評価で間違いないのでしょう」

コトタ「ぽっと出と思ってたら重要人物だったとは……」

なた「では今回はここまでにします」

コトタ「次回をお楽しみに!」

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