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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第16回

なた「前回まででこの企画の主人公が出揃いました」

コトタ「始皇帝、項羽、劉邦、呂雉ですね」

なた「始皇帝はもう死んじゃってますけどね!

   というわけで劉邦が蜂起するまでのお話をしましょう」

コトタ「はーい」

 

沛公誕生

なた「さて秦から強制労働の通達が届きました。

   沛県からも人員を連れてこい、ということです」

コトタ「始皇帝の陵墓や万里の長城の建造の為ですね」

なた「ええ。

   沛県で集められた作業員を劉邦が引率することになったのですが、

   道中でどんどん脱走者が出始めます」

コトタ「実際、死にに行くようなものですしね……」

なた「"遅れれば死罪だし、人数が足りなくても死罪だ。

    このまま行けば到着する前に全員いなくなるだろう"

   と考えた劉邦は作業員を皆解放したのです」

コトタ「えっ!?」

なた「"どうせ殺されるぐらいなら俺は逃げる!

    お前らも好きにしろ!"と劉邦は逃げ出しています。

   解放された作業員の十数人は劉邦に付き従い、

   それ以外は皆逃げたそうです」

コトタ「全員逃げたってことですね。

    思えば愉快な仲間達はどうしてるのです?」

なた「この十数人の中に盧綰や周勃がいたと思われますが、特に記述はありませんね。

   後の記述からすると樊噲はこの時期役人になっていた可能性もあります」

コトタ「ふむふむ」

なた「ここで有名なエピソードが起こります。

   劉邦の一団が山道を進んでいると、道を塞ぐ大きな蛇がいました。

   一団は恐れて"この道は進めないので引き返そう"と口々に話します」

コトタ「避けて進めばいいんじゃ……」

なた「それは言わないお約束……。

   一団は引き返して行きましたが、劉邦はその場に残ります。

   "何を恐れることがあるのか!"と一喝した劉邦は剣を抜き、

   大蛇を真っ二つに斬って先を進んだのです」

コトタ「剣使えたんですね……?」

なた「劉邦が剣を使った話って2回しかないんですけど、その片方ですね」

コトタ「少ない!?」

なた「その時劉邦は酔っ払ってたみたいで、少し進んだところで眠っていました。

   一団は"劉邦様を追いかけよう"と再び山道を進むと、先程の大蛇がいません。

   代わりに老婆が泣いていたのです」

コトタ「蛇が老婆だった……?」

なた「いいえ。

   一団が老婆に話を聞くと、泣きながら老婆は答えます。

   "私の息子は白帝の子で、蛇に化けてこの道を守っていたのです。

    しかし赤帝の子によって斬り殺されてしまいました……"と」

コトタ「白帝と赤帝……?」

なた「これも五行説に関わる話ですね。他に青帝と黒帝と黄帝がいますが、

   白は西方を意味するので、要するにその蛇は秦を表しているのでしょう。

   秦は黒を尊んでいた国なのですがね……」

コトタ「で、どうなったんです?」

なた「一団は老婆の話を信じずに立ち去り劉邦に追いつきました。

   劉邦は一団から老婆の話を聞き"ということは俺が赤帝の子ってことか"と喜んだそうです」

コトタ「そうなりますよね」

なた「漢王朝が火徳だってのは何度か話したような気がします(してないかも)。

   その根拠の1つになったエピソードってことです」

コトタ「なるほど」

なた「で、時系列が陳勝と呉広の反乱に戻ってきます」

コトタ「おお、やっとですね」

なた「簡単に言えば、沛でも会稽と同じことが起きています」

コトタ「沛の県令が反乱に乗じて蜂起しようとした?

    あっちは郡守でしたけど」

なた「ですです。

   他の郡守や県令みたいに殺されたくなかった、ってのが実情でしょうけどね。

   しかし蕭何と曹参が県令に"申し訳ないけど誰もあなたについてきませんよ?"

   と言ってしまいます」

コトタ「そんな殺生な……」

なた「当然県令は"じゃあどないすんねん!"と怒りますよね。

   "どこかに逃げてる劉邦を呼び戻すのがいいでしょう"

   と蕭何らは提案し、県令もそれを受け入れています」

コトタ「劉邦はまだ沛に戻ってなかったんですね」

なた「詳しくはわかりませんが、どこかで山賊みたいな生活をしていたのでしょう。

   樊噲が県令に命じられて劉邦を探しに行っていますが、

   その時には劉邦の一団は100人近くになっていたそうですし」

コトタ「劉邦のカリスマ性で増えたんでしょうねぇ」

なた「で、樊噲に連れられてのこのこと劉邦は戻ってきました。

   すると県令は劉邦を警戒して城門を閉じてしまいます」

コトタ「いやあなたが呼び戻したんでしょう!?」

なた「そして県令は劉邦を呼び戻す提案をした蕭何や曹参を殺そうとしましたが、

   蕭何と曹参は城壁を乗り越えて逃げ、劉邦に合流しています」

コトタ「夏侯嬰も一緒に逃げてそうですね」

なた「この時どこににいたかわかりませんが、劉邦側についたのは間違いないでしょう。

   夏侯嬰についてはかなり義理堅いエピソードがありまして」

コトタ「ほほう?」

なた「ある時、劉邦が喧嘩か何かで夏侯嬰を怪我させてしまったんです。

   戯れと記述があるので内容はよくわからないのですがね」

コトタ「ふむふむ」

なた「すると誰かが劉邦を訴えたのです。

   劉邦は亭長という小役人とは言えど身分もあったので、他人を怪我させるのは重罪です。

   劉邦は"俺はやってない!"と弁解し、夏侯嬰も"劉の兄ぃには何もされておらん!"と証言したのです」

コトタ「それだけ劉邦を慕っていたんですね」

なた「ですね。

   その場は何もなく劉邦も無罪放免で終わったのですが、

   後々どこかからか真実が漏れたみたいで、劉邦はもちろんですが、

   夏侯嬰も偽証の罪で1年以上獄に繋がれています」

コトタ「えっ」

なた「夏侯嬰は何度も鞭打ちで拷問を受けましたが、

   釈放されるまで結局真実を白状しなかったようです」

コトタ「義理堅い……」

なた「さて話を本題に戻しますが、劉邦は矢文で沛の住民にこう伝えています。

   "このままだと反乱軍が沛を攻め落として皆殺されてしまうだけだ。

    県令を殺し、相応しい人物を立てて反乱軍に呼応すべきだ!"と」

コトタ「県令も反乱軍に呼応してる側では……?」

なた「県令はそもそも秦から任じられてる人ですからね。

   どうなるかわかったもんじゃないってのも事実でしょう。

   というわけで住民は県令を殺して劉邦達を迎え入れています」

コトタ「沛は劉邦が手に入れた、と」

なた「そこもスムーズではなかったんです」

コトタ「え?まだ邪魔者が?」

なた「いえ、劉邦は県令に推し立てられていますがね。

   ほら謙譲の美徳ってやつです」

コトタ「あー、曹丕が禅譲された時と同じですね」

なた「"俺が相応しい人物じゃなければすぐに殺されて終わりだ。

    自分が大事ってわけじゃない、能力もない俺が沛のみんなを守れるか不安なんだ。

    だから相応しい人物を探して県令にすべきだろう"と言ってます」

コトタ「言ってることは間違ってないですね」

なた「立場としては蕭何が上役だったのもあり、

   推薦されてはいますが、やっぱり劉邦に譲っています」

コトタ「蕭何には野心がなかった……?」

なた「うーん。

   もし蜂起に失敗した場合、自分の身が危ういじゃないですか。

   だから劉邦を推したって話もありますね」

コトタ「自分が大事なのは当然ですけど……」

なた「さて、劉邦には実はおかしなエピソード、

   というか只者じゃないエピソードが他にもありましてね」

コトタ「これまでだと72の黒子、老人の人相見、大蛇を斬った、ですかね」

なた「ええ。

   劉邦が酔って寝ていると身体の上に龍がいただとか」

コトタ「龍は何かの比喩なんでしょうね」

なた「始皇帝が東の地に巡行した際に"自分を探してるんだ!"

   と思い込んだ劉邦は逃げ隠れたのですが、すぐに呂雉や仲間に見つかってしまいます。

   何度隠れてもすぐに見つかってしまうので"何故すぐ見つけられるんだ!?"と聞くと、

   "あなたの頭上には必ず雲があるのでわかるんですよ"とのこと」

コトタ「いやいや……」

なた「それらのエピソードを沛の住民も皆知っていたので、

   "やっぱり劉邦様が県令になるべきじゃ!"となったわけです」

コトタ「さすがの劉邦も後には退けない?」

なた「何度か辞退を繰り返しましたが、結局誰も立候補しないので、

   劉邦が沛の県公、つまり沛公になっております」

コトタ「県令でなく?」

なた「県令は秦が郡県制で配置した役人の名称ですからね。

   陳勝が楚王を名乗っていたのもあって、

   春秋時代の楚の封建制のやり方に倣ったわけです。

         そもそも沛県が楚の領土だったのもあるでしょう」

コトタ「ああ、そうだったんですね」

なた「まあ項梁は会稽の郡守になってるんですけどね」

コトタ「そう言えば……」

なた「劉邦の元には愉快な仲間達の手助けもあって3000人の兵が集まりました。

   それらを率いて近隣の邑(村)や県を制圧し、ここに劉邦は蜂起したのです。

   赤帝の子と言われたエピソードもあった為に、劉邦軍は旗や装備を赤色に染めています」

コトタ「項羽と劉邦がどちらも歴史の表舞台に躍り出た、と」

なた「ですね。

   次回からはやっと時代が進みます」

コトタ「そう言えば今何年です?」

なた「ずーーーーーーーーーっと紀元前209年ですね」

コトタ「第8回から進んでない!?」

なた「そういうことになりますね……。

   まあ密度が濃い時代ですからね。紀元前208年も長くなりそうです」

コトタ「本当に全何回の企画になることやら……。

    それでは次回の教えて!項羽と劉邦をお楽しみに!!」

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