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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第13回

なた「やっと主人公の片方である項羽が正式に登場します」

コトタ「前回は項羽の親世代の3人と従弟の紹介でしたしね」

なた「では覇王と呼ばれた項羽の物語、はじまりはじまり!」

コトタ「わーい」

 

覇王項羽

なた「改めて言いますが、項羽は字が羽でしてね。

   この企画では項羽で統一しますが、

   三国志の劉備や曹操の様に表記するならば、正しくは項籍です」

コトタ「劉邦を項羽に合わせるならば劉季でしたね」

なた「その通り。
   さて、コトタさんは項羽ってどんな人か知ってます?」

コトタ「この企画をリクエストしてくれた人同様に"凄い人"ってぐらいしか……。

    あえて言うなら劉邦に負けた楚の将軍でしょうか」

なた「認識としてはそこまで間違ってはいないですね!

   ただ実は項羽って史記に本紀が立てられてるんです」

コトタ「ん!?」

なた「紀伝体の"紀"に当たる部分ですね("伝"は列伝)。

   三国志において本紀が立てられてる人物って誰かわかります?」

コトタ「曹操、曹丕、曹叡……」

なた「あと残りの魏皇帝3人ですね。

   劉備や孫堅らは列伝で、本紀は立てられていません」

コトタ「ということは項羽は……」

なた「史記の本紀は五帝、夏、殷、周、秦と続き、その次に(秦とは別に)始皇帝があります。

   そして始皇帝の次には項羽の本紀があるのです。

   つまり項羽は皇帝にはなっていないのですが、

   事実上天下を制したと見做されていたのですよ」

コトタ「ほええ……」

なた「では本題に入りましょう」

コトタ「ここまで余談だった!?」

なた「項羽は8尺余り(約185cm)あり、怪力で知られていました。

   大きな鼎を持ち上げることができたという話もあり、

   それだけなく優れた才能もあったそうです」

コトタ「後に天下を制する人物ですし、当然ですよね」

なた「そうじゃない人もいますがね?

   それはさて置き、項羽には幼少期のエピソードも残っています」

コトタ「あ、気になります」

なた「項梁に養育されていたのですが、項羽はまず書を学んでいます」

コトタ「軍人とは言え勉強は大事ですからね」

なた「すぐに"やめます!"と筆を手に取らなくなりました。

   次に項羽は剣術を教えられました」

コトタ「そっちなら項羽の本領発揮ですよね!」

なた「いえ、そちらも"やめます!"と途中で投げているんです」

コトタ「ええ……」

なた「さすがの項梁も"書も剣も必要だ!"と怒りました。

   すると項羽が答えています。

   "勉強なんて自分の名前が書ければいい!

    剣術なんてのは1人を相手するだけの技術だ!

    俺は万人の敵を倒す方法を学びたいのです!!"と」

コトタ「武人ではなく将軍になりたい、ってことでしょうか」

なた「ですね。

   項梁は"こいつは大物になるな……"と兵法を教えることにしました。

   項羽も当初はそれに喜んだものの、兵法の基礎を覚えると、

   "もうこれだけ知ってれば大丈夫です!!"と学ぶのをやめています」

コトタ「ただの飽き性では……」

なた「もう1つ、項梁が項羽に対して"こいつは大物になるな……"

   と思ったエピソードがありましてね」

コトタ「ほほう?」

なた「項羽は巡行に来ていた始皇帝を見て、こう呟いています。

   "俺があいつに代わってやろうじゃないか"と」

コトタ「秦兵に聞かれでもしたら大変ですよ!?」

なた「項梁も"寝言は寝て言え!一族が滅ぼされたらどうする!?"

   と怒鳴っていますが、項羽の器量に感心したのでした」

コトタ「若い頃から只者じゃないと認められていたんですねぇ」

なた「時代は進み、陳勝と呉広が反乱した噂が流れてきました」

コトタ「ということは紀元前209年ですね」

なた「ええ。

   会稽(治所は呉)の郡守(三国時代の太守)は殷通という人物でした。

   殷通は各地の反乱に対して不安になり、部下に相談しています」

コトタ「郡守は秦によって配置された人ですものね」

なた「部下は呉で名を馳せている項梁を呼び出すことを提案しています。

   というわけで殷通は項梁を呼び出し、話しました。

   "各地で反乱が起きている。今こそ秦を滅ぼす時だろう。

    先んずれば人を制し、後れれば人に制される。

    項梁殿と桓楚を将軍として挙兵しようと思っている"と」

コトタ「桓楚……?」

なた「名声のあった猛将みたいですね。

   秦に追われて逃げていた為、どこにいるかわからなかったそうですが」

コトタ「じゃあダメじゃないですか……」

なた「そういう会話になったでしょうね。

   そこで項梁は"項羽が桓楚殿の居場所を知ってますよ"と言っています」

コトタ「知っていたんですか?」

なた「さあ……?

   続いて"項羽をこの席に招いてもいいですか?"と言い、

   殷通が許可すると項羽が部屋に入ってきました」

コトタ「ふむふむ」

なた「すると項梁が"今だ!!!"と叫び、項羽はその合図で殷通を殺しました」

コトタ「えっ!?」

なた「殷通の部下もそう思ったでしょうね。

   いきなり郡守が殺されたのですから。

   100人近くが項羽に立ち向かったそうですが、

   項羽は1人で全員を殺したとあります」

コトタ「強すぎでは……」

なた「さすがに項羽の強さを恐れた部下達は、項梁に帰順し、

   項梁は印綬を手にして会稽郡守を自称。項羽は副将に任じられました。

   呉や他の県の優秀な役人や士卒を呼び出し、楚復興を掲げて蜂起することを宣言します。

   予てより呉の地では名士との交流も多かった為、兵はどんどん集まっていき、

   項梁の軍は精鋭8000人に上ったそうです」

コトタ「殷通がいい面の皮ですけどね……」

なた「殷通を殺す意味があったのか、って気になるとこですよね。

   ただ史料にも事実が淡々と書かれているだけなので、

   経緯や実情が全くわからないんですよね……」

コトタ「それならしょうがないですね……」

なた「さて、陳勝と呉広の反乱をきっかけに各地で勢力が興りましたが、

   項梁と項羽だけでなく、もう1つの巨星が立ち上がっています」

コトタ「おお!?」

なた「彼は泗水郡沛県で蜂起しました。

   その名も劉邦」

コトタ「出たーーーーー!!!!!」

なた「次回からは劉邦が登場しますよ!!!」

コトタ「楽しみです!

    次回またお会いしましょーーーー!」

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