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コトタさんの教えて!項羽と劉邦 第9回

なた「前回は世界史上初の民衆による反乱が起きた、

   というお話で終わりましたが」

コトタ「今回はその反乱についてですね」

なた「ですね。

   主に反乱が起こるまでの経緯から説明していきます」

コトタ「はーい」

 

燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや

コトタ「聞いたことある言葉ですね」

なた「故事成語でしてね。

   某高校野球漫画、もしくはそのドラマで知ったって人も多いでしょう」

コトタ「ああ、確かに」

なた「"ツバメやスズメでは、白鳥やコウノトリの様な大きな鳥の志をわからないだろう"

   ってことでして、"小さな人間には大きな人間の志はわからない"という意味で使われます」

コトタ「それが関係あるのですか?」

なた「すぐにわかりますよ。

   本題の民衆蜂起ですが、2人の人物が主導したものでしてね」

コトタ「2人……!

    まさか、それが項羽と劉邦ですか!?」

なた「いえ、陳勝と呉広です」

コトタ「ええ……」

なた「呉広については出身地ぐらいしかわかってないのですが、

   陳勝は少しエピソードがあります」

コトタ「ほほう?」

なた「若い頃の陳勝は雇われ農民でした。

   ある日、休憩していた陳勝は同僚の農民達に話します。

   "俺がもしビッグな男になっても、お前らを忘れないからな!"と。

   すると同僚達には"雇われ農民がビッグになれるものか"と笑われます」

コトタ「ビッグはビッグでもビッグマウスと思われてたんですね」

なた「陳勝は溜息をつくとこう言ったそうです。

   "燕雀安知鴻鵠之志哉"と」

コトタ「!?」

なた「そうです。

   "燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや"は陳勝の言葉だったのです」

コトタ「ほええ……全然知りませんでした」

なた「時代は流れて紀元前209年です。

   つまり前回と同じ頃のお話なんですがね」

コトタ「都では胡亥と趙高による大粛清があった頃ですね」

なた「ええ。

   陳勝と呉広は漁陽(現在の北京市辺り)の守備兵として徴発されました。

   2人とも屯長という役職を与えられ、50人程度集団のリーダーを任せられました」

コトタ「まだ……ビッグとは言えませんね」

なた「900人が集められ、任地の漁陽へ向かっていたのですが、

   大雨によって道が塞がれてしまいました」

コトタ「現代みたいに整備されているわけじゃないでしょうし、

    雨の規模によっては進めなくもなりますよね……」

なた「そして思い出してください。

   秦の法律を」

コトタ「あっ……。

    "遅刻したら死刑"でしたね……」

なた「"このままだと約束の日付には間に合わないな。

    到着しても遅刻だから首を斬られるだけだ。

    もし逃げても見つかれば殺されてしまう。

    どうせ死ぬなら秦に抵抗すべきじゃないか!?"

   と2人は話し合ったのです」

コトタ「やるだけやってみよう……ってとこですね」

なた「陳勝はさらに話します。

   "噂では胡亥が二世皇帝になったのは陰謀らしい。

    本来の後継者である扶蘇は胡亥に殺されたとも聞く。

    しかし扶蘇の死はほとんどの者に知られていない。

    そして項燕も楚の名将で民衆に慕われていたそうだが、

    死んだとも逃げたとも言われていて、これまた生死不明だ"と」

コトタ「扶蘇はわかりますが、項燕は一体……?」

なた「先に少しそっち話しておきますか。

   項燕は話した通り楚の名将、大将軍でしてね。

   それこそ漫画キングダムの主人公、秦の李信が20万の大軍で

   楚を攻めましたが項燕に惨敗しているのです」

コトタ「強いってことですね」

なた「その後、秦の王翦が60万を引き連れて楚を攻め、さすがの項燕も奇襲を受けて敗走。

   少しの間は抵抗できていましたが、さらに王翦に追撃されて戦死しています」

コトタ「生死不明だったのでは……?」

なた「正しいニュースが流れてくるわけじゃないですからね。

   楚は項燕の敗北と同時に滅びています。

   ちなみに項燕を倒した王翦の孫、王離は自殺させられた扶蘇

   に代わって匈奴戦線の軍を預かった人です」

コトタ「微妙に繋がってるんですね」

なた「まあ時代と国が同じですからね。

   では話を陳勝らに戻しまして……」

コトタ「扶蘇と項燕はどっちも生死不明だってとこまでですね。

    どちらも死んでるんですけど」

なた「陳勝は"扶蘇と項燕を自称して兵を挙げれば、皆ついてくるはずだ!"と言い、

   呉広は"そうだな!まず占い師を呼んで吉凶を見てもらおうじゃないか"と答えます」

コトタ「占いで政治が決まったりすることもある時代ですものね」

なた「占い師は2人に"反乱は成功しますが、鬼神を味方につけるべきです"と伝え、

   2人は占い結果に大喜びし、早速鬼神へ祈りを捧げました。

   "鬼神を味方につける、つまり民衆に俺らの威信を見せつけるべきだろう"

   と作戦を考えたのです」

コトタ「作戦……?」

なた「簡単に言えば自作自演です。

   布に赤い文字で"陳勝が王様!"と書いて、網にかかった魚の腹に仕込んでおきます。

   すると魚を買って捌いた者がそれを発見して見つけますよね」

コトタ「軽くホラーですね……。

    今だと異物混入事件ってレベルじゃ済まないでしょうけど……」

なた「すぐにその噂は広まったのです。

   さらに呉広が夜になると草むらに隠れて篝火を起こし、

   狐の鳴き真似をしながら"陳勝が王様!"と叫び続けたのです」

コトタ「こっちはコミカルだなぁ……」

なた「当然ながら翌朝には兵士も民衆も陳勝の噂をするのです」

コトタ「自作自演がうまくいった、と」

なた「ですね。

   ここまで来ればほとんど準備完了です。

   2人は反乱作戦の最終段階を実行することにしました」

コトタ「遂に……!」

なた「任地へ赴く際には徴発された民衆だけでなく、

   当然引率する秦の役人や兵士も同行していたのですがね。

   その隊長が酒に酔っている時に呉広は聞こえるように

   "脱走しようかなぁ〜チラッチラッ"を繰り返したのです」

コトタ「意味あるんですか、それ」

なた「呉広は民衆に大変慕われていてですね。

   隊長を怒らせ、自分に罰を与えさせることで、

   民衆を発奮させようとしたのです」

コトタ「なるほど……!」

なた「隊長は呉広に鞭打ちしましたが、まだ呉広が反発するので剣まで抜いたのです。

   すると呉広は隊長から剣を取り上げて、斬り殺します」

コトタ「おお……」

なた「そこに陳勝も乗り込み、他の隊長達も斬ったのです。

   民衆らは歓声を挙げて陳勝と呉広の周りに集まります」

コトタ「これは……演説シーンですね!」

なた「その通り。

   陳勝はマイクを握ってはいないですが、話し始めます。

   "俺らはもう任地へ行っても期日には間に合わん!

    遅刻すれば殺されるのはみんな知っているだろう!?

    もし殺されなかったとしても、どうせ任務で半分は死ぬんだ!

    どうせ死ぬならば歴史に名前を残そうじゃないか!

    王侯将相に種なんてものはない!!!"と。

   これを聞いた民衆は"一生陳勝様に従います!"と口を揃えたのでした」

コトタ「世界史上初の民衆の反乱が起こった瞬間ですね!

    王侯将相に種なんてものはない、ってのはどういうことでしょう?」

なた「"王侯将相寧有種乎(王侯将相寧んぞ種あらんや)"っていう言葉でしてね。

   王様・諸侯・将軍・宰相、つまり高貴な人間なんてのは、

   生まれや家柄で決まるわけじゃない!!って意味です」

コトタ「陳勝があえてそう言ったってことは、

    一般的にはそういう風に考えられていた、と」

なた「ですね。

   陳勝勢力は"大楚"と号し、陳勝自身は将軍を自称しています。

   さて!!決起した陳勝軍は果たしてどうなるのか!!」

コトタ「続きは次回ですね!!」

なた「はい!!!」

コトタ「お楽しみにーーー!」

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