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コトタさんの教えて!三国志 八王の乱編 第49回

なた「前回の終盤から316年のお話をしています。

   つまり西晋滅亡までのカウントダウンが始まった状態です」

コトタ「既に2回も"事実上の滅亡"を経てますけどね……」

なた「果たして今回こそ"真の意味での滅亡"をするのか!!!」

コトタ「それを決めるのはなたさんでしょーーー!?」

 

西晋の滅亡・その10

なた「まずは劉聡のお話ですが、これも経緯を話すと

   かなり長くなるので端折っていきます。

   それでも長くなりそうですが……」

コトタ「はい」

なた「劉聡は宦官の王沈や郭猗らを信任し、

   315年末頃から後宮に篭って政治に全く関与しなくなりました。

   その為、相国の劉粲(劉聡の息子)が政治を掌握し、

   朝廷の決定は王沈らを経由して劉聡に伝えるという

   システムになっていたのです」

コトタ「宦官を信任した皇帝に良いイメージが全くないです……」

なた「当然王沈らは自分達に都合の悪いことは劉聡に報告せず、

   劉聡からの命令も曲解して朝廷に伝えたりしました」

コトタ「そうなりますよね」

なた「皇后の父親、つまり外戚の靳準も王沈らに与していましてね。

   郭猗と靳準は皇太弟の劉乂と対立していたのもあって団結したんでしょうね」

コトタ「外戚と宦官が手を組んだら、もっと良いイメージないですね……」

なた「郭猗は劉粲に言いました。

   "劉粲様は先代(劉淵)の嫡孫であり、陛下(劉聡)の嫡子で、皆心服しております。

    なのに何故皇太弟に天下を譲る必要があるのですか?

    皇太弟と劉敷様(劉粲の弟)は春の宴で反乱し、陛下を太上皇に押し上げ、劉敷様を皇太子に、

    さらに劉勱様(劉粲の弟)を大ボス(大単于)に仕立てようとしているのですよ!"と」

コトタ「劉乂が反乱するとは思えませんが……」

なた「郭猗は言葉を続けます。

   "三王(反乱予定の3人)は精兵を動かそうとも

    疑われる立場ではないので、反乱が失敗するわけがありません。

    しかし二王(劉粲の弟2人)は皇太弟に騙されて陛下や劉粲様を裏切っただけです。

    どうせ皇太弟の一族に全ての地位を奪われてしまいます!

    早く対処しないと大変なことになります。

    何度か直接陛下に訴えましたが、宦官の私よりも家族の情を優先して全く信じてくれないのです!

    劉粲様も私を信用できないならば、王皮と劉惇(二王の側近)の2人を呼び出し、

    徳を以て彼らを諭し、自首させるとよろしいでしょう。真実は必ずわかります!"と」

コトタ「そこまでの自信があるってことは反乱は真実……?」

なた「今度は郭猗は王皮と劉惇を呼び出し、質問しました。

   "二王が反乱するのは本当のことか!?"と」

コトタ「えっ……」

なた「全て郭猗の謀略だったのですよ。

   そんなことを知らない2人は当然"いいえ!"と答えます。

   "しかし既に反乱のことは陛下も相国も知っているのだ。

    反乱に協力するならば、残念ながら君達の一族皆が滅びるだろう"

   と郭猗は追い詰めるのです」

コトタ「かなりの謀略家ですね……」

なた「2人が郭猗に"どうすればいいのですか!?"と許しを乞うと、

   郭猗が秘策を授けたのでした」

コトタ「秘策……?」

なた「後日、劉粲が郭猗に言われた通り2人を呼び出します。

   そして反乱について問い質したのです

コトタ「ふむふむ」

なた「2人はこう答えたのです。

   "反乱の計画は事実です。我々が報告を怠ったことは死に値します。

    ただ陛下も殿下も仁義に厚い方ですので、確たる証拠もない状況で

    三王の名誉を穢す様な報告をすれば讒言だと疑われるでしょう。

    それを理由に処刑される恐れがあり報告を躊躇ったのです"と

コトタ「それが郭猗が授けた秘策……!」

なた「ええ。

   劉粲は郭猗の言った通りであった為、三王の反乱を信じたのでした」

コトタ「うわぁ……」

なた「今度は靳準が劉粲に話します。

   ”殿下は今すぐにでも皇太子となり、天下に天意を示すべきです!

    世間では皇太弟が反乱することは既に大きな噂になっているのです。

    もし皇太弟が天下を奪えば、殿下は漢に残れません!"と

コトタ「それこそ皇太弟に対する反乱なのでは……」

なた「"今、陛下に訴えても信じてもらえないでしょう。

    ここはあえて皇太弟を自由にさせるのです。

    皇太弟は士人との交流が大好きなので、多くの交流をするでしょう。

    その中には必ず佞臣が混じっております。

    佞臣が皇太弟に不穏な謀りをしたとわかれば、私が罪を糾弾しましょう!

    殿下はその佞臣を捕まえて陰謀を吐かせるのです。

    さすれば陛下も信じてくれるでしょう"

   と靳準が言い、劉粲はそれに従ったのでした

コトタ「一般的には靳準が佞臣なのですが……」

なた「この後王沈と対立する忠良な臣下が7人も処刑される事件があり、

   さらに宦官と外戚の力が強くなりました。

   それこそ後漢末期における清流派と宦官の対立の焼き増しです」

コトタ「ですね……」

なた「そんな状況に耐えかねた重臣達が連名で上書したのです。

   "王沈らは国家の害にございます!罪の露見を恐れて忠臣7人を処刑させたのです!

    晋は滅びておらず、石勒は巨大な勢力で拠点を構え、曹嶷も青州で独立しようとしています。

    さらに陛下も病に侵されている状況で、王沈らに政治を任せれば、

    国も病に侵されてしまいます!今すぐ王沈らを免官して罪を明らかにすべきでしょう!"と」

コトタ「劉聡がどう反応するか、ですね」

なた「劉聡は上書を読むと、そばにいた王沈らにも上書を見せたのです。

   そして"我が臣下はバカになったようだな"と笑ったそうです」

コトタ「バカはあなたですよ!!!!!!!!!!」

なた「王沈は泣きながら言います。

   "私達は陛下のお陰でここにいることができるのです。

    しかし諸王や臣下達は私達を大変憎んでいます。 

    私達は陛下の為に自らを大鍋で煮て、死を以て朝廷を安定させたく思います"と」

コトタ「はいはい……」

なた「"待て待て。臣下の戯れ言なんて何度もあったじゃないか。

    お前らは死なずとも良いぞ"と劉聡はほざいたのです」

コトタ「なたさん、口が悪くなってます」

なた「あ、うっかり。

   劉聡は劉粲を呼び出して、王沈らについてどうすべきか聞きました。

   劉粲は"彼らは陛下の忠臣です!"と答え、

   "やっぱりそうだよなー!"と言わんばかりに喜び、王沈らを列侯したのでした」

コトタ「バカ親子……」

なた「ちなみにこのバカ親子の裁定に、上書した重臣達は憤死や自殺してます。

   その重臣の中には劉聡の息子も含まれています」

コトタ「佞臣が悪いのか、暗君が悪いのか……」

なた「どっちもでしょうね。

   さて、ここまで来ればあとは劉乂を除くだけですよね」

コトタ「ですね……」

なた「少し後の話になるのですが劉聡が臣下らを集めて、劉乂も呼び出しています。

   劉乂は憔悴しきっており、泣きながら劉聡に謝罪するのです」

コトタ「謝罪してるってことは反乱するつもりだったのですかね……?」

なた「いえ、なかったでしょうね。

   劉聡はそんな劉乂の姿を見て涙を流し、

   酒を勧めて笑い合い、以前同様に接したのでした」

コトタ「暗君だけど、家族の情に厚いのは事実みたいですね……」

なた「ですね。

   長くなりましたので今回はここで終わりです」

コトタ「西晋が生き延びましたね……。

    次回また会いましょう!」

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